〜 3年間 番外編 〜
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〜 3年間 番外編 〜
『紅い月』
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月を眺める。
ずっと地球に背を向けて、廻り続ける月は道化師。
陽の光を反射して、輝く月は嘘灯かり。
きっと俺と良く似ている。
「お前は、そんなにキレイじゃないだろ?」
月に向かって問いかける。
近づけば良く見える、月の醜さを嘲笑ってみても、
虚しさだけが溢れるばかり……
紅く輝く月の雫が、俺の頬を伝って落ちる。
俺の横には猫が一匹。
他に何も無い部屋だから・・・
静か過ぎる夜、夢か現か判らなくなる。
この部屋の隅っこで、
セルロイドで出来た "君"の抜け殻 一つ飾られ
俺だけに見える 影絵の君が動き出す
〜おはよう〜
朝になれば、言葉の魔法で
君の影も消えるだろう。
それまで、ずっと眺めていよう。
月の光と君の破片を。
俺の身体に染み付いた、
君の香りが幻影となる。
今日は満月。
君の夢を見てもいいだろ?
静かにそっと瞳を閉じる。
紅い月が見る夢は・・・きっとこんな哀しみ色
動かぬ君が見る夢にも・・・きっと紅い月が泣いている?
『紅い月』 完