全宇宙最後の希望

 

ゴクウの紹介で新たに地球の神となったデンデは邪悪な気をもった輩がドラゴンボールを集めていることを察知し、ゴクウたちを天界に集めていた。
デンデ「・・・これで皆さん揃ったようですね。」
神妙な面持ちで話し始めるデンデ。 ゴクウたちも静かに耳を傾けた。
デンデの説明は大雑把な概要だけのものであったが、戦士たちは皆、事の重大さを察知し、それぞれの調査に乗り出そうとした。
そのときである!!
突然空が漆黒の闇に包まれた!
神龍を『邪悪な気をもった輩』が呼び出したのである!!
ピッコロ「遅かったか!!」
クリリン「いったい何を神龍に願おうっていうんだ!?」
ゴクウ「・・・・・!? 急に邪悪な気が増えやがった・・・!! フリーザ、セルの気まで感じるぞ!!」
トランクス「これが1つ目の願いか!! 2つ目の願いは一体・・・!?」
次の瞬間、さっきまでそこにいたはずの戦士たちの姿が忽然と消失した!!
デンデ「・・・・・!? まさか!! これが2つ目の願いか!!」
デンデ「ゴクウさんたちのような『強大な力をもった戦士』を消すように願ったんだ!!」
デンデの周りには誰一人としていなかった・・・。 ただ一人をのぞいて・・・・・。
ヤムチャ「そうするとデンデ・・・。 なぜ俺は消えないんだ?」
デンデ「・・・・・おそらく神龍がヤムチャさんを『強大な力をもった戦士』と認知しなかったから消えなくて済んだんでしょう。 しかしこうなってはヤムチャさん、あなたが地球、いや全宇宙の最後の希望です!!」
ヤムチャ「よ〜〜し。 まずは手軽な初代ピッコロ大魔王から狙ってみるかな。」
宇宙最後の希望の戦士ヤムチャの戦いは始まった・・・・・。


ヤムチャはピッコロ大魔王の場所を探し始めた。ピッコロは今のヤムチャから見れば雑魚に過ぎない。
だが、同時にヤムチャは不安も感じていた。それは本当にピッコロを倒して良いのかという不安である。

彼は疑問に思う。なぜ、ピッコロを復活させたのか。そしてどうして自分を残しておいたのかである。
そもそも、ピッコロ大魔王など甦らせたところでヤムチャに敵うはずもなく、
さらにセルやフリーザと言った強敵に比べれば僅かな誤差でしかない。そのピッコロを復活させたのである。
これに意図がないと考える方が不自然である。

ヤムチャはまず、自分の立場からこの不自然なことについて考えてみた。
最初、自分は簡単な敵である「ピッコロ」に狙いを定めた。そして倒す。
このプロセスに要する時間は恐らく1時間もあれば足りるであろう。ほとんどピッコロを探す時間のみである。
が、その一時間に果たして地球上で何が起こるだろうか? 格闘が好きなセルは一時間で動くタイプではない
しかし、侵略者のフリーザはどうだ、一時間の間に地球の破壊や征服を目論むのではないか。
そうなったとしたら、自分には一体何ができる?

そう・・・ヤムチャの立場から見れば「ピッコロ」の存在は十分に邪魔になりうるのだ。
彼を狙っている間は僅かな時間に過ぎないかも知れないが地球唯一の正義ヤムチャは動けない。
ヤムチャは自分の立場を冷静に考え、ピッコロ狙いが十分な効果を持たないことを認識した。

ついで彼が考えたのは「見えない敵」の立場からである。
セルやフリーザという強敵から見ればピッコロはおろか、ヤムチャでさえ取るに足らない存在である。
それにも関わらずピッコロを復活させた。ピッコロがいたところでフリーザの行動にどんな影響を与えるというのだ
考えられることは幾つかある。最も簡単な解釈はフリーザの強さを知らなかった、という解釈だ。
地球では伝説的強さを誇るピッコロ大魔王である、フリーザと互角であると勘違いしていても仕方あるまい。
こう考えれば、とにかく誰でも良いので最悪の戦士を復活させることが「見えない敵」の目的であると思うこともできる。

が、本当にそうか? 「見えない敵」がピッコロとフリーザとの力関係を知っていたと考えることは本当にできないのか。
まず、「見えない敵」がピッコロをヤムチャに対する足止めとして利用すると考えるのはナンセンスである。
最初に言ったようにヤムチャもセルやフリーザからみれば取るに足らない存在だ。
故に「見えない敵」の立場から見ればピッコロの存在にはヤムチャの足止め以外の理由が存在するはずである。
それは一体なんだ?

ヤムチャは考えていた。。。が、敵の姿が分からない以上、このことの答えがでるはずもなく
彼はピッコロを最初の敵から外した。そして、彼が選んだのは魔人ブウである。
ブウなら殺せる。それもセルやフリーザと一緒に。

ヤムチャはブウの気を探した。

ヤムチャはブウを発見して、そこに急いだ。
ブウの所に着くと、セルとブウが戦っている。ブウはチビタイプの物だ。
実力的にはブウが勝っているはずなのだが、以外にもこの二人の戦いは互角であった。
ヤムチャ「こんな戦いもあるとは・・・セル、やはり奴も天才だ」

セルは第23回天下一武道会でピッコロが見せた巨大化技を使っている。その使い方が巧妙だ。
まず、セルジュニアを生む。そしてセルジュニアに巨大化技を使用させる。
さらに自らの気を押させることでセルジュニアとセルの区別を付かないようにさせる。
この作戦は見事と言うほかない。
「正直、セルがここまでやれるとは思ってなかった。
 だが、セルよあんたには負けてもらわないと困る。俺の作戦のためにな。」
ヤムチャの考えた作戦はこうだ。
まず、ブウに何らかの方法で知能を与える。理想的なのはセルを吸収させることだ。
そして、その上でブウを騙し自らを封印させる呪文を喋らせる。無論、上手くいく確率は非常に低い。
だが、ヤムチャが強敵に勝つためにはこの手段しかないと確信していた。

フリーザは狂喜した。
過去に二人のサイヤ人により屈辱的な敗北を喫し、殺されたはずの自分が蘇ったのだ。
フリーザは目を見開いて己の体を嘗め回すようにみつめた。機械ではない、生身の肉体。
しかも、自身の体内に以前とは比べ物にならないほどの力が充実しているのを感じる。
サイヤ人が死の淵から蘇る事により戦闘力を上げるという事は知っていたし、だからこそサイヤ人
の存在を警戒していたのだが、よもや自分にもそのような性質があるとは知らなかった。
(今まで私をそれほどまでに追いつめた者などいませんでしたからね・・・)
フリーザは含み笑いをもらした。
スーパーサイヤ人を超えた今の自分こそ、正に『宇宙最強の生物』であろう。が、
「その事を今すぐ彼らに教える必要がありますね」
フリーザは空の彼方、今まさにセルとブウが死闘を繰り広げている空域をみつめてつぶやいた。
肉眼では確認できない程遠いが、フリーザは感じていた。強者達の、気を。
それはブウ達だけでは無い。もう一つ、フリーザの元へ向かってくる巨大な気を感じていた。
地平線の彼方に豆粒のように現れたかと思った次の瞬間、その男は既に目の前にいた。
凄まじいスピード。だが、フリーザは臆することなく言った。
「まず最初にあなたを血祭りに上げて差し上げましょう・・・」
「宇宙最強の生物と言われているらしいな・・・」
男はマントを脱ぎ捨て、構える。
「宇宙最強の生物と魔界の王・・・。どちらが格上か、教えてやろうッッ!!」
ダーブラはフリーザに飛びかかった。

ヤムチャは岩陰に隠れて気を最大限(最低限?)に抑え、セルとブウの戦況を確認していた。
(さて、計画を立てたはいいが、都合よくセルを吸収してくれるものか・・・。)
戦況はセルの巧みな戦術をもってしてもブウの力の前にはかなわないらしく、徐々にブウのほうが押してきている。
このままいけば、ひょっとするとブウが勝手にセルを吸収してくれるかもしれないが、こうしている間にも他の邪悪な気を持つものが世界中で暴れまわっているのだ。
そのことを考えると一刻もはやくこの戦いに決着を着けてもらわなければならない。
(地球が受ける被害はドラゴンボールで何とかなるが、まさか奴ら、地球ごと壊したりしないよな・・・。)
(いや、まてよ。 何者かがすでに願いを叶えているわけだから一年間待たなければならないのか・・・。)
(オイオイ、そんなことよりもまずはセルとブウをどうするかだろうが。 なんとかしてセルの動きを封じれば・・・)
ヤムチャは思考をフル回転させていた。
しかし、フル回転させていたがために一人の凶戦士の襲来に気づくことが出来なかったのだ・・・。
凶戦士の影がヤムチャに迫った・・・。

ザッ!!
ヤムチャの目の前に現れた凶戦士!!
「ヘヘヘ、貴様の顔、どこかで見たことあるな。」
「・・・お前は・・・ナッパ!!」
もしかするとヤムチャがナッパの襲来に気づかなかったのはナッパの気がセルやブウに比べるとあまりに微弱だったからかもしれない・・・。
「(こんなヤツ、相手にしてる時じゃないのに)お前は邪魔なんだよ!!」
一撃、ヤムチャは気功波をはなちナッパを消し去った。 ヤムチャの気はあのころから格段に上がっているのだ。
しかし、その高い気を一瞬ではあるが放出してしまったことが命取りだった。
激闘を繰り広げていたセルとブウの手がピタッと止まった。
「・・・ギ!?」
「この気は・・・、ヤムチャか。 岩陰に隠れているな!!」
ヤムチャの放った気光波はセルとブウの両方の注意を引き付ける結果を招いてしまったのだ
焦るヤムチャ!!
(し、しし、死んでしまう・・・。)
しかしヤムチャは気づいてなかった。 ナッパの所持していたビンが自分の足元に転がっていたことを。
そしてその中にはあの憎きサイバイマンの種が無数に入っていたことを・・・。

そのころ、混乱に包まれた全世界を1つのニュースが駆け巡った・・・。
――――――――ミスターサタン、出撃!!――――――――

『サーターン!サーターン!』
今、最強の戦士がゆっくりと姿を現した。
『サーターン!サーターン!』
過去、幾度も世界を救ったこの世で一番強い者。
『サーターン!サーターン!』
アフロのように茂っていた髪は散り、全盛期の頃の筋力は衰えたという本人の弱気の発言もあった。
だが、その気迫はまだ若い格闘家達の追随を許さず、最近あった試合では気合いだけで相手選手を場外に叩きだしたのは知らない者がいないほど、有名な話しであった。
Mr.サタンとMr.ブウ。
この二人が現役でいる限り、格闘家達は最強の目標と彼らを定め、鍛錬を続けて行くことだろう。そして、その鍛錬の成果を試すために挑み、そしてまた伝説を残すことだろう。誰もがそう疑う事もなく思っている。

地下シェルターから出たMr.サタンの姿を見た民衆は全世界の希望の象徴の名前を一斉に声を高らかに口にした。
その声に応えるかのようにMr.サタンはマントを翻し、両手でVサインをした。
「ふはははははは!このMr.サタンがいる限り、この世の平和を乱す悪党は必ず滅びる事が決定しているのだ!」
その言葉に歓声がさらに大きくなった。自分の言葉には人々に勇気を宿す力がある。サタンはその事を知っていた。無理をしてでも大口を叩かねばならない。自分の弱気は絶望をもたらせてしまう。
自分の名誉の為だった大口が、今は本当に役に立っている。自分はどんなことがあろうとも『希望の戦士』でありつづけなければいけないのだ。

サタンは判っている。この世界で今起こっている事態が。この世界のそこら中で感じる大きな力のぶつかり合いが。
『こんなときに・・・ブウ・・・お前は一体、どこへ行ってしまったのだ・・・?』
いつの間にかブウは消えていた。少し目を離しただけだった。その間にブウは何処かに行ったのか、消えていた。それどころか悟空さんたちの気も感じない。
『いざという時ブウや悟空さんたちがいる。』そんなサタン自身の希望は今は、無い。
だから、今は行かなければならない。最後の希望は、サタン自身なのだから。
こぉぉぉぉっと息を吸い込み、気合いを入れて空へ飛び立った。舞空術である。『空を飛ぶ』というのは演出としては最高レベルのものであるため、気の使い方、気の読み方などの基礎と同時に悟飯から習っておいたのである。
そのお陰で気合いで敵をふっとばしたり、瓦を28枚割ったり、パンチマシーンで274点出せるようになったり、サタンミラクルウルトラスーパーメガトンパンチは壁をぶち抜けるくらいになる程の攻撃力。
そしてローリングアタックサタンパンチで昔より多く回っても目を回さない程の防御力と、新たなサタン道場の入門者を手に入れていた。
自分にはそれだけの力が・・・・サタンは自分の気持ちを奮いたたせた。
「思い出せ・・・自分より強い相手に対して自分が行った『あの』頃の戦い方を!!」
『サーターン!サーターン!』
背中に世界中の民衆の希望を背負い、サタンは空を駈けた・・・

決意を固め、シェルターから一番近い放送施設のある場所―――『西の都』へと向かうサタン。その更に上空に、その姿を見守るようにたたずむ人影が一つ。その姿はサタンシティの第三のヒーロー、グレートサイヤマンであった・・・・

再び、場面は変わりセル対ブウ。先ほどのナッパの強襲によりヤムチャは二人に発見されてしまった
「あの気はヤムチャか?」なるほど、これは使えるな。そう思いながらセルは太陽拳を放った。
すさまじいほどの光に目のくらむブウ。その隙を突きセルはヤムチャの前へと降り立っていた
「なかなかいいタイミングだぞ、貴様。さぁ、この私に貴様のエネルギーをよこせ。」
そう言うとセルの尻尾がヤムチャを襲った・・・しかし、間一髪ヤムチャを助けるものがいた。

ブウだ。ブウの放った気功波によりセルは体制を崩してしまい、ヤムチャは難を逃れることができた
しかし、ヤムチャの危機は去ったわけではなかった。
ブウもまたいつ終わるかもしれないセルとの戦いに苛立ちを感じていたのだ。
そこにヤムチャが現れた。無論、ブウの狙いはただ一つ、セルと同じくヤムチャの力を吸収することにあった
おそらくは生き返った悪人の中でも最強であろうこの二人によるヤムチャの奪い合いが始まった。

先ほどまでとは違いすぐ目の前で繰り広げられる激闘を前にヤムチャは失禁していた。
そして、ブウの放った輪っかのようなものがセルの動きを止めた。
動けないセルを前に悠然とヤムチャに近づくブウ。その恐怖を前に逃げることすら忘れ
ヤムチャはただ呆然と座り込んだ、そのときヤムチャの手に何かが触れた。
それが何かも分からぬまま、ヤムチャはブウめがけて投げつけただが、そんなものは意にも
解さないといった面持ちでブウは近づいてきた。

しかし、そのブウに異変が起こった。体のあちこちからサイバイマンの上半身や頭が飛び出してきたのだ
そう、ヤムチャが投げたものとはナッパが落としたサイバイマンの瓶だったのだ。


「バカ!あんたが行ったって無駄死にするだけだ!」
「悟飯君も悟天君も…みんな消えた… だったら、今、残っている私たちが
行かないでどうするんです!?」

話は小一時間ほど遡る。西の都、カプセルコーポレーションの前には消えた戦士たちの、残された家族が
集まっていた。
シティ本部からグレートサイヤマン出動命令が下されたが、もはやここには
悟飯はおろか、地球を救えるような力を持つ者はいない。ビーデルは悟飯の
意志を受け継ぎ一人、グレートサイヤマンとして戦いに赴こうとしていたのだ。

「そうだ。18号さんの言うとおりだ。かわいいビーデルちゃんまで死なせちまったら、
オラ、いなくなった悟飯ちゃんに会わせる顔がねえだ。」
「あいつらはわたしたち人間が敵うような相手じゃないのよ…」
チチ、ブルマが相次いでビーデルをたしなめた。
「でも…わたし…」
「わかってるよ。サタンのことが心配なんだろ?」
18号がビーデルの言葉を遮って言った。
「今、ここにいる中で唯一ヤツらに立ち向かえるのはわたしだけだ。
グレートサイヤマンとかいうもののスーツを貸すんだ。」
「ダメよ!いくらあなたでも、魔人ブウやセルには歯が立たないわ!」
「クリリンも消えた…あいつはわたしを人として初めて認めてくれた。
もう、これ以上の犠牲を出したくないのはみんな同じだ。
少しでも可能性があるなら、わたしにだって敵の足止めぐらいできる。
だから…ブルマさんたちは、消えたみんなを元に戻す方法をどうにか解明してくれ。」

「わかったわ。やってみる。18号…あなたも絶対に無理しないでね。」
「18号さん、ごめんなさい…わたしがもっと強ければ…」
「ビーデルちゃんは悪くねえ。18号さん、無茶は禁物だ。」
「ああ、それじゃ行ってくる。
…マーロンをよろしく頼んだよ。」

――グレートサイヤマン、もとい18号にはある確信を持っていた。
あのとき、そう、神龍に自爆装置を取り除いてもらったとき、自分の中で
抑えられていたエネルギーが湧き上がったのを。おそらく、人造人間である
自分を破壊するほどの爆弾を起爆するには強大な力が必要だったのだろう。
そして、装置が取り除かれたことで、その分のエネルギーが開放された。

18号が消されずにすんだ理由――それはおそらく、“邪悪な気を持った者”が神龍にした願いが
『強大な“気”を持った正義の戦士を消してくれ』だったのだろう。
つまり、犯人は“気”の概念を知る者…それが幸いしたといえるのだろうか。
だが、ヤムチャ、18号ともそのことにまだ気づくはずもなかった。

(やっと見つけた、サタン。今回ばかりはあんた一人には任せきれないよっ…)
そのころ…
世界の各地ではフリーザ一味と地球軍の戦いが始まっていた。

「行けー!!ひるむなあぁーーーッ!!!…ぐぎゃあっ!!」
「隊長殿ーッ!」
巨大なエネルギー波が炸裂し、指揮を取っていた男が爆発に巻き込まれ、粉々に吹き飛ばされる。

「がっはっはーッ!死んでたとはいえ、俺のパワーも落ちてないなぁ!」
彼の名前はドドリア。ピンク色の肌にゴツゴツとした皮膚を持つ、フリーザ一味の幹部クラスの実力者だ。
「ケッ、地球人ってヤツはつくづくもろい種族だぜ。なあ、ザーボン?」
「あまり派手に暴れすぎるな。この星を破壊するのは、フリーザ様と合流してからでも遅くは無い。」
ザーボンと呼ばれた男が降りてきた。その光り輝く緑色の長髪と、美しい顔とは裏腹に、変身することによって、ドドリア以上の力をも持つ変身型の宇宙人だ。

「しかし、なぜ私たちが生き返ったのだ…?ナメック星で、ベジータに殺されたはずだが…。」
「細けえ事はいいじゃねえか。そんなことより、もう一暴れしてくるぜ。」
そう言うとドドリアは地面を蹴り、飛び上がった。
はるか上空から街を見下ろす。そして、口を動かしたかと思うと、その口から極太のエネルギー波が発射された。放たれたエネルギー波は地表に激突し、大爆発を起こした。
辺りに瓦礫の破片が飛び散り、噴煙が舞い上がった。

「ゴホッゴホッ!まったく…乱暴なヤツだ…!」
ザーボンが呆れたような顔つきで呟いた。
「へっへっへ…さて。もう一発イk…?」
突然、ビルの屋上から何か黒い影が飛び出してきた。その影は、腰の刀に手をかけると、目にも止まらぬ速さで、鞘から抜き放った!

一 閃 …

ドドリアの身体は腹から真二つに両断され、上半身と下半身は力なく落ちていき、そのまま地面に叩きつけられた。

「何!?」

ザーボンが驚きの声を上げる。ドドリアを斬った者は、空中で身をひるがえし、隣のビルの壁に飛び移った。

「孫のヤツ…。まったく…シャレにならんヤツだな…俺は闘うのが一番嫌だってのに…。」
ビルの壁を滑りながら、一人の中年剣士が降りてきた。

―ヤジロベーだ。
「ほう…貴様が、ドドリアを斬ったのか。なかなかやるようだが、その剣…私に通じるかな…?」
 ボ ン ! ! 
ザーボンが変身を開始する。先ほどの美しい姿とは打って変わって、醜い大男へと変貌した。
「醜くなるのはシャクだが、仕方が無い…。貴様を地球人の見せしめに殺してやる!!」
ザーボンがヤジロベーに飛び掛る。繰り出されたパンチを刀の腹で弾くヤジロベー。しかし、さすがのヤジロベーも
変身したザーボン相手には防戦一方だ。徐々に距離を詰められ、ついに、刀を弾き飛ばされてしまう。
「もらった!死ねぇーッ!!!」
ザーボンの掌に気が溜まり始める…。

―突然、どこからともなく一筋の光線が飛んできて、ザーボンに襲い掛かった!
「 ぐ あ あ あ ! ! ! 」
ザーボンはその光線に絡めとられ、宙へ舞い上がった。
「うぐぐ…!み…身動きがとれん…!!」

「どうじゃ?萬国驚天掌の味は…?」
その光線は一人の老人が放っていた。その腕から放たれている気は、凄まじく、ザーボンをも封じ込めるほどだった。

「キ…貴様何者だ…!?」
「わしか?わしは…」
老人はかけていたサングラスを取り、投げ捨てた。その目は老人にも関わらず、鷹のように鋭い眼光を放っていた。

「わしの名は、武天老師!地球は、貴様らの好きにはさせんぞ!!」

そう、世界各地では、かつて、悟空たちと雌雄を決した武道家たちが闘っていたのだ!
カリン塔では、ウパとボラの親子とカリン様が…。サタンシティや他の村ではナムとチャパ王、ギランなど天下一武道会の強者たちが…。
占いババの宮殿近くでは、ドラキュラマン、スケさん、ミイラ君、アックマン、そして、あの世から駆けつけた、悟空の祖父・孫悟飯が…。

そして、カプセルコーポレーション社前では、先ほど集まった、チチやビーデル、ブルマが…。

各地で、街を奪還・死守しようと奮闘していたのだ!

「わしらは、悟空やクリリンが戻ってくるまで、貴様らから地球を守ってみせる!わしらが、いつまでも悟空に頼っていると思ったら大間違いじゃ!!地球の戦士たちの力を甘く見るでないぞ!!!」
亀仙人が吼えた!

18号…ミスター・サタン…そして、ヤムチャ…。「全宇宙最後の希望」という3つの点は、はたして繋がっていくのだろうか……?


ダーブラがフリーザに飛びかかる。
「つぁーーーっ!!」
タックルから裏拳、正拳3発、そして蹴り上げのコンビネーションを決めた。

「オッホッホ… 動きに無駄がありすぎますよ。」
「何ぃっ、後ろに!?」
ダーブラの攻撃を紙一重でかわし、フリーザは背後に回っていた。
「クッ!」
振り向きざまにダーブラは回し蹴りをするが、フリーザは後ろに飛び跳ねて避ける。
二人の間に10メートルほどの距離ができた。
「野蛮な肉弾戦は本来、わたしの好むところではありませんが、フフフ…
今回は素手の戦い、受けてたちましょう。」
「クク…なめられたものだ。いくぞっ!」
またもやダーブラが仕掛ける。パンチ、キック…しかし、攻撃はことごとくかわされる。
「おのれぇっ!」
「はいっ!!」
ボグッ…
フリーザがカウンターで拳をダーブラの腹にめり込ませた。

「がはあっ!!」
思わず膝から崩れ落ちるダーブラ。
「どうやらわたしは強くなりすぎてしまったようですね。
このままではいじめになりそうです。そうなる前にひと思いに殺してあげましょう。」
フリーザが手刀をかざしたそのとき…

「「プッ!」」

ダーブラが唾を吐いた!

振り上げた手でそのまま唾をはらうフリーザ。
「最後のあがきですか?涙ぐましいですが… これで終しまいです!」

再び手刀を上げようとしたフリーザは手の違和感に気づいた。
「触ったな!?私の唾がただの唾だと思ったら大間違いだ!こうやって倒れたのも貴様に唾かけを
あやしまれないようにするためだったのだ!」
「そんな、体が石になってゆく?」
「布一枚でも羽織っていれば良かっただろうが、今の貴様に石化をとめる術はない。一生、石のまま生きていくのだな。」
「助けてください!どうか、たす……」
フリーザは完全に石と化した。
「まさか、ここまでうまくいくとはな。宇宙最強も、魔界の力にかなうはずがなかったのだ。」

と、そこへ高速飛行で向かってくる者が一人いることにダーブラは感づいた。
「また、楽しめそうだな。」

その人物は石化したフリーザの前に降り立った。
「感動の親子対面といきたかったところだが…」
「貴様は…知っているぞ、コルド大王だな。」


「覚えていてくれて光栄だ、ダーブラよ。」
「ひと足遅かったな。貴様の息子は私が今、芸術をほどこしたところだ。
そして、次は貴様の番ということだ。」
「フ…何を勘違いしている?ダーブラよ。お前は蝶という生き物を知らないのかね?」
「何を言い出すかと思えば…魔界にだって蝶はいるわ!くだらんことを言う暇があるなら私に注意を
はらうべきだな。」
「蝶は幼虫から、動かない蛹を経て劇的な変化を遂げる。我々も同じように変身ができるのだ。」
「何?」
「フリーザとの決着はまだついてないということだ!」
ベキィィィィン!!
石化したフリーザが突然、砕け散った。そこには、壊れた石像の倍近くの高さがあろう影が見える。

「石化するときの俺の迫真の演技はどうだったかな?
石の中は窮屈だったぞ。本来なら俺たちの変身に蛹の段階はないが、あの石がちょうど蛹の役目に
なったということか?」
「ちぃっ、フリーザ!!まだ生きていたとは…」
「今の俺は手加減ができない。覚悟するんだな、ダーブラ!」
「面白い、ならば私も力を出すか。」
そう言うとダーブラは槍を取り出し、両手に持ち構えた。

「いい余興が楽しめそうだな。高みの見物といくか。」
コルド大王は高台に飛び乗り、腰をおろした。

何も無い中空から槍を取り出したダーブラを見て、フリーザは鼻を鳴らした。
「槍術か。無駄だと思うがな・・・」
「ほざけッッ!!」
槍の連撃がフリーザを襲う。素早いなどと形容できるものではない。それはもはや光であった。
が、フリーザはそのことごとくを片手、人差し指一本で流していた。
力の流れを読み、最少の力で槍の方向を変え、避ける。
ダーブラの額に脂汗が浮かぶ。
(これほどの使い手なのか、フリーザッ!)
「これが全力ではないだろうな?」
全力だった。にも関わらず、当たらない。
「とんだ期待はずれだったな、息子よ」
コルド大王は笑った。
(おれは魔界王ダーブラだ!敗けるわけにはいかぬッッ!!)
ダーブラは槍を片手に持ち替え、もう一方の手に剣を具現化した。そして掛け声と共に斬りかかる。
攻撃はさらに激しいものとなった。二刀流であろうとも精度、威力共に先ほどより上。
だがフリーザはかわし続けた。しかも・・・
(両目をつぶっている・・・)
ダーブラの表情はついに焦燥から絶望へと変わった。この男には、勝てない。
「もういいだろう?終わりにしようぜ」
ダーブラの猛攻をくぐり抜け、フリーザはダーブラの両目をつぶした。

苦痛のうめき声を上げ、ダーブラはかがみこんだ。既に闘争心は奪われていた。
むしろダーブラはとどめを刺されることを望んでいた。
「こ・・・殺せ・・・」
ダーブラが言う。フリーザはゆっくりとダーブラに歩み寄る。
するとコルド大王がフリーザになにやら言いたげな視線を投げる。フリーザはうなずいた。
そしてフリーザは手の平をダーブラの顔面に押し当て、気を集中させると・・・
ダーブラの両目を治療した。
「貴様・・・敗者(おれ)に情けをかけるつもりかッッ」
「そうではない。ただ俺は・・・もったいないと思っただけだ。お前は殺すには惜しすぎる」
フリーザの言葉にコルド大王が笑みを浮かべる。
「お前の槍の一撃一撃・・・その全てが過去の俺を葬りうるものだった。俺がパワーアップさえしていな
ければ・・・この勝負を制したのはダーブラ、お前だっただろう」
ダーブラはフリーザの顔に魅入っていた。この男、一体何を考えているのだろうか・・・
さらにフリーザは変身を解き、言った。
「私たちと組みませんかか?ダーブラさん。あなたにはその資格があります」
「それを俺が受け入れるとでも思っているのか?」
ダーブラは言った。受け入れられるはずがあろうか?魔界の王が他の者の軍門に下り・・・
(違う。この男、完全に勝利した相手に対して『手を組め』と言ったのか・・・)
「どうでしょう?私は強制しないし、あなたを『部下』にするつもりもありません。ただあなたの強さに
敬愛を抱いているだけですし、そのあなたと組めたらどんなに素晴らしいかと思っているだけです」
フリーザは満面の笑みを浮かべた。気味の悪い、好感の持てない顔であるがダーブラは魅かれた。
その男の発するなんとも言えない魅力に。
フリーザには他の者が持ち得ない、絶対的な悪のカリスマというものがあった。
「俺を部・・・仲間にしてどうするつもりだ?まさか宇宙征服とでも言うのではなかろうな?」
「そのつもりです」
即座に返事が返る。ダーブラはちらりとブウ達の闘っている空域に目をやる。
「あんな化け物達がいるにも関わらず、か?」
「だからこそあなたの力が必要なのです。私が夢をかなえるには。理想郷を創るには・・・」
フリーザの笑みがますます大きくなる。ダーブラに見えない位置で、コルド大王も笑っていた。
(もう一押しだ・・・息子よ)
「私は宇宙全域を支配し、統一国家を創ります。あなたの、魔界の力を私に預けてもらえませんか」
ダーブラの心はフリーザに奪われた。この男の創る国を見ていたい。そのすぐ傍らで。
「部下でかまいません、フリーザ様。私の魔の力、存分にあなたにお与えしましょう」
ダーブラはフリーザのカリスマ性に屈した。フリーザ親子は顔をあわせ、にっこり笑った。
「ありがとうございます、ダーブラさん。ではまず始めに私の部下を回収しに行くとしましょうか」
新生フリーザ軍団は、ザーボン達の元へ向かって飛び立った。


小川のせせらぎが聞こえる。小鳥のさえずりが聞こえる。
やわらかな日差しが差し込み、森の木々のざわめきが村人達を癒していく。
ここは小さな田舎町、勇敢な戦士も邪悪な戦士もいない平和な町。
人々は戦いを知らずにいつもと同じ生活を続けている。

この村の小高い丘に一人の女が立っていた。女はこの村で育った人間だ。
あぁ・・・こんなことがあるんだろうか、あの地獄のような喜びの日々がまた繰り返されるなんて。
壊れたはずの家屋が元に戻っている。干上がったはずの小川が再び流れている。
小鳥たちは安らぎを取り戻し、平和がこの町にやってきている。
もし、この世に神がいるのなら。私にきっと同じ人生を繰り返させようとしているのだろう。
この町は再び私の手によって滅びる。あの快感を再び味わえるのだ。
女はゾクゾクと震え上がるような喜びを感じた。

兄弟と共にゲロの改造を受け、人にあらざる物としての刻印を受けた。
RRの文字を刻んだ服は彼女が人を止めたときにもらった物だ。
「いや! 近づかないでよ。ゲロに改造されたんでしょ・・・化け物」
「違う。。私は人間だよ」
彼女の手が親友の頭に触れたとき、親友の首は転げ落ち噴水のように血が湧き出てきた。
「こんなにも脆いの・・・あはっ・・・はは。。。
 人間ってこんなに脆いの! ははははっ」
女は笑った、大声で笑った。「初めて知った、脆いんだ人間って」

彼女は変わった、優しかった少女はもういない。人を壊す快感を貪る狂人がそこには存在した。
皮のプチッとした弾力、筋肉のほどよい歯ごたえ、脂肪の柔らかさ、それに
骨の硬さが絶妙なアクセントになって、人の破壊は何よりの快感となった。
「あぁ・・・この感触、まるで高級料理みたい」
女は人間を切り裂きながら、快感に酔いしれる。兄弟と共に、破壊の限りを尽くした。

だが、そんな彼女にも終わりの時が来た。トランクスと名乗る少年に破壊されてしまった。
女の一生は終わった。だが、再び繰り返されようとしている。同じ場所で・・・そう、この場所から18号の破壊は始まった。
パートナーの17号は今はいない。だが、彼女にはどうでも良かった。もう一度あの快感を・・・
「神様がいるのなら感謝します。時を戻し、再び私はここに戻ってこれました」

18号は町に近づいていく。町の平和も終わりを告げるときが来た。
そんな彼女に一人の少女が近づいてくる。

「おかーさーん」
18号に娘などいない。。。だが、少女は間違いなく18号を母親と認識していた。
「どうしたの、昔の格好に戻って・・・サタンさんには会えたの?」
18号は少女の言葉が理解できない。だが、これだけは分かったこの娘は自分を母親だと思いこんでいる。

「サタン。。。あぁ、会えたよ」
「じゃぁ、敵と戦ってきたの?」
「あぁ、そうさ」
「もちろん、勝ったよね」
「まぁね」
18号は少女の言葉に話を合わせた。

「私も力があればお父さんの代わりに戦うのに・・・お母さんだけ戦場に行かせたくないよ」
「お前に力をあげようか」
「本当・・・でも、どうやって?」
「人造人間にしてあげる」
「やったー。みんな人造人間になれば絶対に負けないよね」
少女の無垢な笑顔が18号の心をくすぐる・・・あぁ、壊したい。

ボキッ! 18号は少女の腕をもぎ取った。「え・・・お母さん。。。」
「人造人間になりたいんだろ」
「お母さん・・・止めてよ。。。」
18号は少女の声に耳を貸さず、4本の手足をもぎ取った。
そして肩に足をつけ、股に手を生やす。最後に首をもぎ取り、股ぐらに押し込んだ。
そして、少女の体をひっくり返し、背中にカラスからむし取った羽をつけてやった。
「どうして・・・こんなことするの。。。おかぁ・・・」
少女は力尽きた。

緑に茂った草は少女の血でドス黒く染まり、カラスの羽を生やした躯はまるで死神のように平和な町を見下ろしていた。

「・・・もう、いないだろうな?」
息を荒げ、サタンは辺りを見渡した。足下にはパワードスーツの残骸が転がっている。中にはブラックと名乗る男が気絶している。
「ふん。なんだ。たわいもない。これでは折角用意したこれが使う暇もないではないか!」とサタンはボストンバッグをバン!と音を立てて叩いた。
西の都に着いたサタンを待っていたのは、過去、最凶最悪の軍隊と呼ばれたあのレッドリボン軍であった。
他の復活した悪人たちに比べれば雑魚と言えるだろう。だが雑魚と言っても相手は重火器を持っている。ブウや悟空さんたちならいざ知らず、普通の人間であるサタンにはその銃弾の一発でも当たれば、もはや戦闘不能に陥る。
そんな綱渡りのような戦いをサタンは勝った。西の都の一部を解放したのだ。もちろん、ただの一部だ。他の場所では今でも他のレッドリボン軍の将軍たちと西の都に住む人達が組織した自警団達との小競り合いが続いている事だろう。
今、サタンは西の都のTV局にいる。理由は簡単だ。このMr.サタンが闘っている。その事を全世界に放送する為だ。
自分のネームバリューをフル活用するにはもっともうってつけの方法だろう。
「Mr.サタン!用意が整いました!いつでも放送できます!」
サタンはTV局のスタッフの声に頷く事で返事をし、TVに向かって演説を始めた。
「全世界の諸君!わたしの声が届いているだろうか!Mr.サタンである!!今、西の都に巣くう悪党の一団を退治した所だ。
これから、他の街の悪党もこのMr.サタンが退治してやろうではないか!諸君!わたしが諸君らの所へ辿り着くまでの辛抱だ!待っていろ!すぐに駆けつけて、悪党などコテンパンにやっつけてやる。ふははははははははは!!」

・・・少し誇張した短い演説だ。しかしこれを聞いた者たちの胸には確実に勇気の芽が芽生えただろう。これでいい。
サタンは安堵のため息をついた。そして再び息を吸うと歩きだした。有言実行をする。そうしなければ『ヒーロー』とは言えないからだ。休んでいる暇などない。戦闘のショックで崩れかかったドアノブに手をかけた時、突然後ろで瓦礫の崩れる大きな音と声がした。
「これでも・・・くらえぇぇぇぇっぇぇぇっぇぇぇ!!」
それはブラックの声だった。サタンが後ろを振り向いた時には既にミサイルの発射音が聞こえ、自分の方へ向かって来ているのが見えた。ゆっくりに見えた。本当にゆっくりと、自分へ着弾しようとしている。
ああ、このミサイルはわたしに当たるのか?とサタンは他人事のような気持ちでそのミサイルの軌跡を見ていた。
そのミサイルは寸分違わず自分の方に向かってきた。そして、爆発した。
「くくく・・・油断したな!この俺にとどめを刺さなかったのが貴様の敗因だ!」
ブラックは勝ち誇った。この爆発で生きていられる人間などいない!そう信じて疑わなかった。
だが、次の瞬間、ブラックは信じられないものを見ることになった。球状の何かの中に人影が見えたのだ。
しかもあの爆発で傷一つつかずそこにいる二人の人物をみたからだ。
1人はサタン、そしてもう1人は・・・おかしなヘルメットをかぶり、マントをたなびかせた、まるで何処かのテレビの変身ヒーローがそのままこの場に出てきたかのような格好をした人物。
そう、グレートサイヤマンであった・・・。
「500万ゼニーってとこかな?あとで取りたてに行くよ。サタン。」
グレートサイヤマンはそうサタンに向かって笑いかけた。
・・・ブラックが再び地に伏すまで、それから数秒とかからなかった。
「じゅ、18号さん・・・ですよね?」
「ち、違う!あたしはせ、あ、悪は絶対許さない正義のの使者!グレートサイヤマンだ!!(なんであたしがこんな格好してサタンに言い訳までしなきゃいけないわけさ!?どうしてさ!!)」
「は、はあ・・・で、18号さん。何故わたしの所へ?」
「・・・ビーデルに頼まれた。『パパが無理をしないように見てくれ』とな。」
諦めたように18号はため息をついてそう言った。少し違うが、間違ってる訳でもない。
「ビーデル!そうだ、ビーデルは無事なんですか!?」
「ああ、今カプセルコーポレーションで・・・っ!!」
「ど、どうしたんで・・・っ!!」
二人は次の言葉を言えなくなっていた。突然、脳に直接誰かが語りかけてきたからだ。
『やれやれ、さっきの放送はなんだい。ボクは正義の味方みたいなのって、大ッ嫌いなんだよね。』
「だ、誰だ!?」
『おや?君はさっきの放送をしていたMr,サタンではないかい?世界中の無駄な抵抗してる奴らに君の演説の無意味さをこれから教えてあげようと思うんだ。どう思う?』
「な・・・っ!?」
『ボクの名前はバビディ。この話しはね、君だけじゃなく、世界中のバカどもにも聞こえてるんだからね、いいかい、邪魔しないでくれよ。まずこれを見て貰おうか。』
ぱっぱらぱあー!という呪文とともに、脳裏に浮かんだのは戦車や戦闘機の残骸、そして人の死体の山。
『見えるかい?まったく。この国の王様ってのはホント役に立たない軍隊をもってるんだねぇ。キングキャッスルもすぐ墜ちるよぉ〜。』
つまりバビディはこう世界中の人に言っているのだ。「軍隊の力と一個の人間であるサタンの力、どちらを信じるか」と。
『そういうことだから、無駄な抵抗は止めた方が楽に死ねるよ。それじゃ、また新しい事が判ったら連絡するよ。じゃぁね。』
ぶつん、と、まるでテレビの電源を切るかのようにバビディからのテレパシーは一方的に切断された。
・・・サタンは唇を噛んだ。世界中の人達に抵抗する気力をわき起こらせるという、せっかくの自分の計画が台無しになってしまったからだ。

「18号さん・・・これから、わたしはキングキャッスルに行ってきて、あのバビディとか言う奴と闘ってきます・・・・。」
そうでもして、勝たない限り、人々の不安は拭えないだろう。
「そうか・・・なら、あたしも・・・」『一緒に行くよ』と言いかけた時突然、街の中心あたりで大きな爆発が起こった。
「・・・あれは・・・カプセルコーポレーションの方向!?」
18号の胸にかつて無いほどの不安が走った。いや、これは不安というには胸がざわつく程の・・・悪寒。
「サタン!お前は先に行ってろ!わたしは一度カプセルコーポレーションに戻って様子を見てからすぐ合流する!判ったな!!」
18号はそれだけ言うともの凄いスピードで爆発の会った場所へと飛んでいった。なんなんだ・・・・この胸騒ぎは・・・!!
「・・・マーロン・・・!!」
18号は不安をうち消すかのように、最愛の娘の名前を口にした・・・・。

みずから英雄という名の道化師を演じると心に決めたサタンは人々の希望を絶やさないためにバビディの元へ・・・。
最愛の娘の異変を直感的に感じた18号はつらい現実が待ち受けるカプセルコーポレーションへ・・・。
そして我らが希望の星、ヤムチャは・・・・・。

 自分の投げたビンにサイバイマンの種が入っていたことを知らないヤムチャは驚くしかなかった。
ブウの中から現れたのは、半ばトラウマになっていたサイバイマン。 目に涙が滲んできた。
だが、よく観察してみるとヤムチャはブウが苦しがっていることに気付く。
(ブウが生み出したわけじゃないのか? どういうことだ?)
さらに考察を続ける。 ブウの足元の自分が投げつけたビンの破片、ブウから生まれ出るサイバイマン、さっき葬ったナッパ・・・・・。
しかし、ヤムチャの考察はそこで途切れた。
セルが動きを封じられていた輪っか状の肉片を引きちぎったため、そちらのほうに意識を集中しなければならなかった。
セルは再びヤムチャを吸収しようと超スピードで突撃してきた。
(や・・・やられる!!!)
 突如、ヤムチャとセルの間に一匹のサイバイマンが入ってきた。
サイバイマンはヤムチャに背を向け、仁王立ちしてセルを見据える。
(なんだ!? オレを守ってくれてるのか!?)
しかし、セルはさらにスピードを上げサイバイマンをなぎ払おうとする。
セルとサイバイマンが接触したその瞬間・・・・・

巻き起こる大爆発!!

サイバイマンがセルと共に自爆したのだ!!
(サ、サイバイマン・・・・・!?)
見ると、失禁してうずくまっていたヤムチャを取り囲むように総勢12体のサイバイマンが立っていた。
サイバイマンはヤムチャを自分達の主人だと認知したのだ!!
さらに、魔人ブウから生まれたサイバイマンはブウの力を吸収し、格段に戦闘力が高まっていた。 おそらくパワーだけならキュイに匹敵する!!
ヤムチャもようやく思考が一つにつながった。“このサイバイマンは敵ではない。”
ヤムチャはふと、悟空のことを思った・・・。
(天津飯、ピッコロ、ベジータ、・・・みんなもともと敵同士だったのに今は悟空のもとに集結している・・・。
そしてオレの周りにはサイバイマンが集結している!! こんなにも心強いことはないぜ!!)
ヤムチャとサイバイマン×12は体を起こしたブウと、爆煙の中から姿を現したセルを見据えた。
ブウ&セル、それに対する、ヤムチャ&サイバイマン×12。
数の差こそあれ、力の差はまだ計り知れない。
だが、自分には仲間(サイバイマン)がいる。ヤムチャは、それが何よりも嬉しかった。

かつて人々に、孤高・尊大の狼王と呼ばれ、恐れられ、称えられた俺。昔はそれでよかった。
しかし、悟空に出会って以来、彼は独りではなくなった。孤独を愛していたはずのヤムチャには、いつの間にか仲間の存在が必要になっていた。
(悟空たちは、もういないんだ。)

「 俺  が  や  ら  な  く  て、  誰  が  や  る  ん  だ ! ! 」

ヤムチャは立ち上がった。体から、気がほとばしる!なんと、戦闘力は2倍にふくれ上がっていた。
ヤムチャの言葉を聞き、涙するサイバイマンたち。
突然のヤムチャの変わりように動きを止めて少し躊躇するセルとブウ。
周りの状況を半ば忘れかけ、ヤムチャは心の中で続ける。
(悟空、みんな、お前らのかたきは必ず討つ!プーアルよ、サイバイマンたちはお前のように俺を慕ってくれるいいやつらだ。)

……プーアル?
「そうだっっ!!プーアルは、まだいるはずだ!無事なのか!?無事だよな!?」
興奮がピークに達しつつも意識が現実に戻ったヤムチャは、セルとブウをにらみつけた。
「お前らは邪魔なんだよっっ!!」
さらにヤムチャの戦闘力が上がる。2倍。総計、驚愕の4倍。
今にも飛び掛ろうとするヤムチャを制するかのように、ある声が脳内に届いた。

『やれやれ、さっきの放送はなんだい。』

バビディの声であった。無論、その声はサイバイマンやセル、ブウにも聞こえていた。
「バビディまで復活してたのか、何てこった…。」
演説に、その場にいる全員が耳を傾けていた。
しかし、それは少し間違っていた。ヤムチャが気づいたとき、既にセルの姿はなかった。
人語を解さないブウは、演説に気を取られたセルのわずかな隙を見て吸収してしまったのである。
知能のあったセルにとって、まさかそれが仇になるとは思いもしなかっただろう。
「どうすりゃいいんだ!ブウがセルを吸収しちまったら、勝ち目がねえよ!」
ヤムチャは悲壮感をぶちまけた。自分の当初の計画のことは既に忘却の彼方にあった。

セルを吸収し、姿を変えたブウはヤムチャを横目で見る。
「あちらのほうが面白そうだ。」
そう吐き捨てると、ブウはバビディの方へ向かって飛んで行った。
「ま、待て!逃がすかよっ!…くそっ、ついて来い、お前ら!」
「キー!!」
ヤムチャは急いでブウの後を追いかけた。
それに続く、19匹の仲間たち。なぜかその中には7匹のセルジュニアの姿が混じっていた。
主人がいなくなったセルジュニアは、単純に数では敵わないとみてヤムチャを新たな主人と認知してしまったのだ。

しかし、ヤムチャのスピードで果たしてブウに追いつけるのか?

場面は変わって18号に移る。
カプセルコーポレーションの近くで起こった爆発を確かめるため、18号はまたブルマの家に向かった。
18号には言葉では説明できない不安感があった。何か、自分にとって最悪の出来事が起ころうとしている。

同時刻、ブルマの家ではレッドリボン軍の攻撃から身を守るため西の都の人々が
避難してきていた。だが、そのブルマの家もすぐ隣まで砲弾が届いていた。
ウーロンが心配そうに言う。
「お、おい。 大丈夫かよ、次は当たるんじゃねぇのか」
「大丈夫よ、レッドリボンの狙いはうちの研究施設よ。ここにいれば安全だわ」
「でも、レッドリボン以外の連中が攻めてきたら…」
「それまでに誰かが助けに来てくれる、信じるしかないでしょ
 それより、テレビで状況を確認しましょ。レッドリボンより他の連中の方が怖いわよ」
ブルマはそう言うと、テレビをつけて世界の戦況を確認しようとした。
が、その瞬間、信じられない映像が彼らの目に飛び込んできた。
「正午頃、北の都近くの小さな町で一人の若い女が 町の破壊活動を行っている
 映像が、カメラに映し出されました。それがこの映像です。」
綺麗なはずの町並みが、原形をとどめないほど滅茶苦茶にされている。
「この町って、確か18号の故郷だよな。確か今、マーロンが戻っているはずじゃ…」
「無事だと良いんだけどね」
だが、そんな彼らの願いは無惨にも打ち砕かれた。
町を見下ろす小高い丘に、無惨な姿で死んでいるマーロンの姿があったのだ。
「ひでぇ…」
「18号が知ったら悲しむわね」

しかし、さらに追い打ちをかけるように残酷な事実が彼らの前に現れた。
映像を見ると町を破壊しているのは間違いなく18号自身だったのである。
「どういう事だよこれ?」
「嘘でしょ…」
悲しみにくれる彼らのもとに、心配になって駆けつけてきた18号が戻ってきた。
「爆発があったみたいだけど、大丈夫か?」
「…」
「どうした、大丈夫なのか?」
「見れば分かるじゃない、大丈夫よ。それより、あんた一体どういうつもりなの?」
「どういうつもりって…」
「わたし達を騙してたのね」
「ブルマ、何を言ってるんだ」
「こんな事もあろうかと、用意しておいて良かったわ」
そう言うとブルマは人造人間用の緊急停止コントローラーを取り出した。

緊急停止コントローラーを18号に向けるブルマ。
「急にどうしたんだよ」
ブルマに歩み寄ろうとする18号。
「それ以上近づいたら、あなたの機能を停止させるわよ!自分の子であるマーロンを手にかけておいて
よくのうのうと帰ってこられるわね」
「ちょっと待ってくれ。今、何て言った?マーロンが…死んだ…のか?」
「まだ白を切る気!?」
「何があったのか、詳しく説明してくれないか…?」
「あんたなんかに話す必要はないわ。テレビに映ったあんたが何よりの証拠じゃないの」
18号は奥のテレビに目をやる。破壊活動を行っている18号の顔がアップで映し出された。
「あれは…あたし?…あそこはあたしの故郷じゃないか」
「いいかげんにしろよ、18号!お前がサタンを助けに行ってくれたから、ビーデルが、故郷に戻りたがっているマーロンを連れて行ってくれたんだぞ!それなのにお前は俺たちを裏切って…」
ウーロンが声を荒げた。

(わからない…頭が混乱しそうだ)
テレビに映った、身に覚えのない行動をとる自分を見る18号。再び顔がアップで映し出された。
「あっ!!」
18号は思わず声をあげた。
「今度はなんなの!?」
「ブルマ、あんたならわかるはずだ。あたしが昔していたイヤリング。自爆装置エネルギーを制御するための
ものだって、あんたから直接聞いた」
「もちろん、知ってるわよ。あれは研究のためにあんたから預かった後、分解して今も倉庫に保管しているわよ。
関係ない話をしないでちょうだい!」
「違うんだ、もう一度テレビに映っているあたしを見てくれ。耳に昔のイヤリングをしたままなんだ」
ブルマ、そして部屋にいる全員がテレビの方を振り向く。画面の中の18号は確かに、原型を留めたままの
イヤリングをしていた。それは、テレビの向こう側とこちら側の18号が別人だという証拠になりえた。
ドクターゲロ亡き今、18号とイヤリングの関係を知る者は、この部屋の中以外にいないからだ。
「あれはあたしであって、あたしじゃない。昔のあたしなんだ。でも、どうやってここに…」
「タイムマシンだわ!きっと」
18号が言い終える間もなくブルマが答えた。
未来の人造人間は現代の人造人間より凶悪な性格だ。かつて、未来から来た自分の息子、トランクスはこう言っていた。
「おそらく…推測だけど、暴れている18号は、何者かによって未来から連れて来られたのよ。
どうやらここにいるあなたは無実のようね。」
ブルマは構えていた緊急停止装置を下ろした。

「そうだっ、ブルマ、あんたさっき、マーロンが死んだとか言っていたな。…それは本当なのか?まさかあいつ(未来18号)が…?」
「…………」
「そんなことって…嘘だよな!?マーロンに会わせてくれよ!!」
18号は沈黙する皆に向かって叫んだ。

「ただいまー!!」
少女の声が部屋に響く。
「あれ、お母さん、もう帰ってきたの?グレートサイヤマンに戻ってるし、私たちよりも速かったんだね」
あっけにとられている一同を前に少女は話を続ける。
「悪者を倒したお母さんもすごいけど、あのおじさんの手品もすごかったよ。ちょうりょうのくっていう手品なの。
私と同じ顔のお人形を持っててね。お母さんが寂しくないようにって、代わりに渡してくれたの。
お母さんも気づかないで私と思ってたでしょ?」
「おじさん?いや、そんなことよりマーロン、あんたが無事でよかっ…」
やっとのことで18号は口を動かしたが最後は声にならなかった。そして、最愛の娘を抱きしめた。
「やっぱりわからなかったんだ。お母さんたら、おじさんのこと全然気づいてなかったもん。
…どうして泣いてるの、お母さん?」

マーロンの後ろで状況が掴めないビーデルに、ブルマは18号が二人いることを説明した。
頭のいい彼女はすぐに事情が飲み込めたようだ。
「ところでマーロンの言っていた『おじさん』って誰なの?あんたも見たんでしょう?」
休む暇もなくブルマは質問する。
「あの色白の肌の人…昔、見たことがあるわ。でも、誰かまでは思い出せないんです。
そういえばあの人、超能力だとか言ってたわ。もう一人の18号さんが別人だってすぐに気づいたみたいで
私とマーロンを制止してくれたんです。そして、ここまでついて来てくれた。あの人がいなかったら、私たち
きっと殺されてました。早くあの18号を止めないと…!」
「そんなすごい人が、まだ地球にいたとはね。何よりあんたたちが無事でよかったわ。」
(超能力…まさかね)ブルマはなぜだか懐かしい気分が湧いてきたのを感じた。
「そういや外が静かになったような…」
ウーロンがぽつりと呟いた。

レッドリボン軍の戦車・兵器・戦闘機は動く気配がない。そのほとんどが破壊されていた。白煙が上がり
空を覆い尽くしていた。
避難民たちに自警団の人々は口々に言った。急にレッドリボン軍が同士討ちを始めて、ついに自滅してしまった、と。

空を覆う白煙の中に一つの影があった。
(今ので僕の超能力がどれくらいになったか、試すことができた。強い敵に効くかはわからないけど、早く他の戦地に向かわないと)
天津飯に戦力外通告を言い渡されて以来、みんなの力になれず歯がゆい思いをしてきたが、戦闘力では
及ばない自分も、持ち前の超能力の向上をはかることをやめなかった。地面に落ちている木の枝自体に
超能力をかけて、見た者全てにそれが特定の人間だと思い込ませることぐらい、楽なものであった。
ついに、人々の役に立てるときが来た。チャオズは西の都を後にした。

戦いが激化する中、山岳地帯に身を潜め、静かに戦況を見守る者がいた。
初代ピッコロ大魔王その人である。
すべてが始まるほんの少し前、彼はすでに『存在』していた。

『何のために?』

よみがえった悪人たちと彼を分けるもの、それは
『ドラゴンボールにより生き返ったか否か』である。
記憶はあいまいだ、孫悟空の手により、命を落としたところまでは覚えている。
だが、それ以降のことは・・・

何よりも彼を驚嘆させたのは体中にみなぎる力だ。それはかつての比ではない。
ピッコロ、神、ネイルの3人が同化し生まれた本当の名も忘れた最強のナメック星人
彼の中にはその大いなる力があった。

いったい何が起こったのだろうか、あの時自分は確かに死んだはずだ。
そして、この世に産み落とした、自らの分身『マジュニア』の気も感じられない。
ヤムチャが最初のターゲットをこのピッコロ大魔王に定めなかったのは
『幸運』としか言いようがない。

ピッコロは耳を傾ける。自分が意識を取り戻したときに聞こえた
『あの声』が再び聞こえるように・・・

セルを吸収し,キングキャッスルに向かったブウ。
それを追いかけるのは我らがヒーロー,ヤムチャとその仲間たち(栽培マン×12,セルジュニア×7)である。
言うまでもないが,ブウとヤムチャ一行との距離はぐんぐん開いていった。
もっとも,ヤムチャは栽培マンの足につかまり,その栽培マンはセルジュニアの足につかまって飛んでいたのであるが…。
まったくどうでもいい話であるが20人が連なった長い人間梯子は,その後 フォーメーションAとヤムチャに名付けられ,移動において使用されることになる。
「くっ!やはり追いつけなかったか!おい!もっと早く飛べないのか!セルジュニアB!」
自分の無力さを棚にあげてセルジュニアを一番後方から叱るヤムチャ。そのとき,彼は気になる一つの気を感じた。
気はさほど大きくはないが,それでも地球人の気よりも遙かにでかい。そしてヤムチャの知る人物によく似ていた。下に広がる荒野,そこにその男はいた。
ちょうど,気の主を見つけようと見下ろしたヤムチャと,奇妙な一行を見上げたその男の目があった。
「あ…あの男…まさか…」
ヤムチャは気づいた。その男が何者なのかを。
ヤムチャ自身その男とは全く面識がなかったが,クリリンたちからその男のことは聞いていた。悟空の兄…サイヤ人,ラディッツ。
「おい!お前ら!止まれ!敵だ!」
ヤムチャはラディッツを倒そうと,栽培マンたちを止めた。勝算のある戦いは逃してはならない,そうふんだからだ。
ヤムチャたち一行は突撃の構えを見せた。…が,てっきり逃げるかと思っていたラディッツが,こっちへ飛んできた。そしてヤムチャに寄るなり情けない声をあげた。
「あ,あんた,何者だ?栽培マンだろ?それ…。なぁ助けてくれよ…」
「な,なんだいきなり。オレはお前の……いや。ん?何でお前が助けを求めてるんだ?何があったんだ?」

 ヤムチャはラディッツから話を聞くことにした。
ラディッツのことなど実際どうでもいいが,何かに利用できると考えたのだ。
ラディッツの話によると,生き返ったフリーザが魔界の王ダーブラと和解し,宇宙侵略に乗り出すとスカウターでかつての部下たちに連絡したのだ。
そして手始めにこの星を完全に支配しようと中の都…キングキャッスルに向かうと言ってきたらしい。そこに集合せよという命令だったのだが…
「フリーザ様はどうやらオレたちサイヤ人がやはり気にくわなかったようでな…。サイヤ人は部下として認めず,見つけたら殺せと命じられたのだ。」
「なるほどな。フリーザは惑星ベジータを破壊したのもサイヤ人が気にいらなかったからだそうだからな。それに2人のサイヤ人に酷い目にあったし」
「そうなのか!? オレは隕石が衝突だと聞いていたぞ。そ…それに2人のサイヤ人というのは何だ?サイヤ人がフリーザ様を倒したのか?」
「まぁその話はあとだ。長くなるんでな。…でお前さんはどうしたんだ?オレたちについてくるのか?オレたちもこれからキングキャッスルへ行く予定だぞ」
「……。あ…ああ。あんたらについていきたい。どうやらかなり強そうだしな…。頼む。連れていってくれ」
「……まぁそういうならいいぜ。」
ラディッツはヤムチャたちに会う前に,ヤムチャたちの戦闘力を感知していた。そのときにスカウターが計測不能で爆発し,この一行がただものではないことを認識していたのだ。
特戦隊レベル…いや,それ以下でもよかった。特戦隊やザーボンたちに見つかったときに彼らが戦っている隙に逃げることができれば…。
ラディッツもサイヤ人の特性でかなりのパワーアップを果たしていたが,それでもドドリアクラスには及ばない。そしてラディッツも自らのパワーアップに気づいていない様子だった。
一方,ヤムチャもラディッツを囮に使えれば上出来だと思っていた。
……が,まさかこのヘタレ二人の間に友情が芽生えようとはこの時は誰も予想しなかっただろう。

こうして,ダーブラを加えたフリーザ一味,セルを吸収したブウ,そしてヤムチャ一行が,バビディとサタンのいるキングキャッスルに集結しつつあった。
最終章の舞台はキングキャッスル――。

魔人ブウ、フリーザ、そしてヤムチャ一行が中の都にあるキングキャッスルへ向かっていたころ、キングキャッスル周辺では、…サタンとバビディが対峙していた。
今、サタンとバビディの戦いが始まろうとしていた。

「魔導士バビディ!世界を貴様の好きにはさせんぞ!!わしが叩き潰してやる!」
「君が、さっき馬鹿みたいな演説していたサタンか…ふ〜ん、ただの人間じゃないか…」
「ふん!わしもオマエがそんなに小さくて弱そうなヤツだとは思わなかったぜ!」
サタンが皮肉の混じった言葉を言い放つ。バビディは気にせず、話を続けた。
「本当に気に食わないヤツだ…分かった、僕自ら遊んであげるよ。光栄に思うんだね。」
サタンは持っていたボストンバッグを脇に放り投げ、構えを取った。

―ブウ…本当にどこへ行ってしまったんだ…?頼むから、助けに来てくれえ…
サタンが軽い現実逃避を起こしていると、バビディが掌になにやら気の塊の様な魔力球を作っていた。これが、魔術というものか…?

「一発で死ぬのと、ジワジワとなぶり殺しにされるのと好きな方を選ばせてあげるよ。」
「も…毛頭、死ぬことなんて考えてないんでね…選ぶ必要は無い!」
「そっか…。じゃあ、今すぐ死んじゃえ!!!」
バビディは持っていた魔力球をサタンに向かって投げ、空中で炸裂させた!
小さく細かくなったエネルギー弾が散弾銃の弾丸のように猛スピードで向かってくる!!
「くそっ!」
サタンはすかさず横に飛びのき、拡散弾を回避した。拡散弾はそのまま飛んでいき、建物に次々と突き刺さった。

―あ…あんなもん喰らったら死んでしまう!!必ず避けなければ…!
空中で身をひるがえし、受け身を取ったサタンは思いっきり地面を蹴り、バビディに向かっていった!
「うおおおおりゃああああ!!!」
「チィッ!」
バビディは魔力で杖を作り出してサタンの攻撃を受け止めた。しかし、流石に年をとったとはいえ、元世界チャンピオン。鍔迫り合いを制したのはサタンの方だった。
サタンのひざ蹴りがバビディの横っ腹に命中し、一瞬よろめいだ隙を見逃さず、勢いよく蹴り飛ばした。
バビディはすぐに起き上がり、サタンの方を見たがかなり接近してきている。
「バ…バリアー!!!」

バビディの声と共に魔力がほとばしり、バリアーが作られバビディを包み込んだ。
「うおおおおお!ダイナマイトキィーーック!!!」
叫び声と共に地面を蹴り、鋭い飛び蹴りを放つサタン。
ダイナマイトキックとバリアーが激突し、その威力で爆風が巻き起こる。
「ぐぬぬぬぬぬ…!!!」
「な…なんて、パワーだ…!バ…バリアーがもたない…!!」
次の瞬間、バリアーがガラスの割れるような音をたてて砕け散った。即席で作ったものとはいえ、それを破れるほど、サタンはパワーアップしていたのだ。
「く…くそ!」
間一髪、ダイナマイトキックをかわすと、飛んでいくサタンに魔力球を投げつけるバビディ。
空中で爆発が起き、白煙が舞い上がった。
「ハッハー!ナイスショーット!!…何!?」
綺麗に地面に着地したサタンの道着は敗れていたが、その下に何か特別なものを着込んでいた。
「ふっふっふ…これは、知り合いの科学者(ブルマ)に頼んで作ってもらった、特別性の道着だ!!戦車の砲弾が炸裂してもビクともしないんだぞ!貴様の攻撃など効くか!!」
「ぐ…ぐぐぐ…!」
「遊びは終わりだ!」
再度向かってくるサタン。バビディは舌打ちをして、サタンをにらみつけた。

「くそっ!こうなったら、これでも喰らえ!!」
バビディとサタンの目が合うと、サタンの頭の中に激痛が走った。バビディの魔術だ。
「ぐああああああっ!!!あ…頭がぁ…!」
「はぁっはぁっ、そのまま弾け飛んじゃえ!ぼ…僕に逆らうからだ!!」
頭を押さえ、のた打ち回るサタン。激痛で頭が割れそうだ。だんだん意識が遠くなっていく…。
「く…これまでか…。ビ…ビーデル…!」

ふと、急に頭の痛みが止んだ。
「ぐ…あれ?」
おかしいと思い、周りを見てみるとバビディがいない。一体何処へ行ったんだ?

不思議に思い辺りを見回していると、背後に何かが落ちてくるような音がしたのがわかった。

振り返ってみると、それは下半身を失ったバビディだった!
「ひ…ひいいいいっ!!」
思わず後ずさるサタン。一体誰が、バビディを…?

ふと、上を見るとセルを吸収して容姿が変化したブウがふわふわと浮いていた。
そして、サタンと目が合うと、にやりと気味の悪い笑みをうかべた。

「久しぶりだな、Mrサタン…?」
「あ…あわわわわ…」

ヤムチャ「やばい、ブウがキングキャッスルに着いちまったぞ!!飛ばせ、セルJr!!」
セルJr「キィーーーッ!」
ラディッツ「おーい、待ってくれえ〜…」

「くそっ!! ブウの気がキングキャッスルに到着したとたん、バビディの気が消えやがった・・・。
奴め、いきなり暴れてやがるな・・・。 急げ!!急いでくれ!!セルジュニア!!」
ヤムチャはセルジュニアの足につかまるサイバイマンの足につかまった状態でそれなりにカッコいいことを言って自分の士気を高めていた。
「ヤ、ヤムチャさん? キ、キングキャッスルに着いたとしても勝算はあるんでしょうか・・・?」
ラディッツが言った。 すでにセルジュニアのスピードについていけなくなったラディッツはヤムチャの足につかまり、夢の架け橋、フォーメーションAの最後尾を飾っていた。
「フ・・・フン。オレの戦闘力はさっきの戦いで格段にパワーアップを果たした・・・。
なんとかなる・・・。 そうさ、なんとかなるさ!!!」
一瞬、ラディッツの一言で絶対的な戦闘力の壁の現実に連れ戻されたが、さすがはヤムチャ、すぐに自己暗示をかけて立ち直った。
「そ、そうっスよね!!ヤムチャさんの今の戦闘力はあきらかに強化型サイバイマンのそれを超えています。ブウがどんな奴かは知らないっスけど、きっと楽勝っスよ!!」
ヤムチャは自分を励ましてくれるラディッツにプーアルの姿を重ねた。
そして、ただ単純に『“強化型”サイバイマンを超えている』と言ってもらえたことが嬉しかった。
サイヤ人来襲のあの日以来、ヤムチャはサイバイマンにコンプレックスを抱いていたからだ。
―――――――――思えばこれが二人の友情の始まりだったのかもしれない・・・。

ウッキャーーーーーーーー。」突然、セルジュニアが叫んだ。
「クキャーーーーーーーーー。」サイバイマンが続いて叫んだ。
「何? ヤムチャさん、キングキャッスルが見えてきたそうです!!」ラディッツが通訳した。
(やっぱり、引き返そうかな・・・。)ヤムチャは思った。


「どうした?サタン。世界チャンピオンが逃げ回ってばかりじゃ面白くないだろう?」
「ヒィィィィーーーーーーーーー!!し、死んでしまう・・・。 !? なんだ? あの空に浮かぶ人間梯子は・・・。」
サタンには21人の連なった人間梯子が不思議と夢の架け橋に見えていた・・・。

ブウに狙われ,ただただ怯える世界チャピオン,Mr。サタン。
サタン「ヒィィィィーーーーーーーーー!!し、死んでしまう…。ん!? 何だあれは!」
ブウ「ん……!?」
サタンは見た。半壊してどてっぱらに大きく穴をあけたキングキャッスルから空の彼方を!!
空に浮かぶ奇妙な人間梯子。(助かった…)味方かどうかもわからないのにサタンはほっと胸をなでおろした。が!!!
サタン「あ……ひぃぃぃぃ化け物!!!!!ぅはぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!」
緑色のキャベツみたいな頭をした化け物,そして昔見たことのあるセルジュニアの集団である!サタンはまた絶望の淵にたたされた。
ヤムチャは仲間たちに叫ぶ。
ヤムチャ「よし!!!まず様子見だ!!!セルジュニア大輔!…そして栽培マン美津子,まずブウに攻撃をしかけろ。そしたらブウに一瞬のスキができるはず!
そこを逃さず,栽培マン夕子と明美がブウにはりついて自爆!とりあえずそこまでだ!後はそのとき考えよう!」
そういうとヤムチャとラディッツは付近の建物にさっと隠れた。
ラディッツ(何というすばやい考察力…!敵を見ただけで適切な対策を一瞬にして練り,さらに自分は常に安全な位置をキープ…恐れ入ったぜ)
ラディッツの賛美とは裏腹に栽培マンとセルジュニアたちは主人を間違えたかも…と少し不安になり始めていた。

が,何かとっておきがあるんだろうと思い,他の残りの者はヤムチャと共に付近の建物の影に隠れ,栽培マン美津子とセルジュニア大輔は主人のために無謀にもキングキャッスル内のブウに突撃する!!
栽培マン夕子と明美もそれにつづき,
が!!
ボンッ!ボンッ!
ブウに到達する前にあっけなく撃沈される二人。指から発射されたエネルギー弾は一瞬にして二人を灰にしてしまったのだ
ブウ「なんだ?追いかけてきたのか?バカどもめ」
ヤムチャ「と…俊充――!!明美―――!!!」
ラディッツ「いや,あれは大輔さんと美津子さんです」
ヤムチャ「引き返せ!え…っと…安子…これはオレの元カノ…何でもいい!は…はやく」
スキをつくはずだった栽培マン夕子&明美だが,ヤムチャの声が届く前に撃ち落とされていた。
ヤムチャ「くそ〜〜体制を立て直すぞ!ラディ!みんな!」
ラディッツ「しかしヤムさん…敵に追いかけられてしまいますよ!!」
ヤムチャ「くぅ〜!せっかくいい作戦を思いついたのに…!!」
ラディッツ「え!?」
ヤムチャ「融合だよ……」
栽培マン・セルジュニアたちはまた何かおかしなことゆってる…と心の中で嘆いていた。
そのとき,ヤムチャの顔色が突然,蒼白に変わる。空の一点を凝視したまま。一同もその方向へ目をやる。
宇宙の帝王フリーザとその父コルド,そして魔界の王ダーブラ,その他数名の部下たちが恐ろしいスピードでこちらにやってくる!!
ラディッツ「ひぃぃああああ〜〜〜!!!!」
ヤムチャ「黙れ!!まだ気づいてはいない!!チャンスだ……」

ブウから逃げていたヤムチャたち一向の前にフリーザ軍が迫っていた。
「あ、あわわ、ヤ、ヤムチャさん・・・フリーザ様がこっちへ・・・」
ヤムチャの落ち着けとの指示も虚しくラディッツは激しく狼狽していた。
相手はベジータですら滅多に会うことの許されなかったあのフリーザである。
無論、ラディッツは直接フリーザを見ることすら初めてだったが、かつて部屋中を飾っていたプロマイド
(ドドリアによる押し売り)のおかげでなんとかそれがフリーザであるということが分かったのだ。

(キュピ━━━━(゚∀゚)━━━━ン!!そうだ、この手があった)
「ラディッツ、慌てるな、奴はまだこっちに気づいてないブウの奴がやっか・・・おい、ラディッツどこに行く気だ!?」
「ふっはっは、お前とはここでお別れだ、ヤムチャさんよ。」
「何を言っている?」
「フリーザ様ーーーッ!!」
そういうとラディッツは単身フリーザの元へ駆け寄った。
「くそ、隠れるぞ、大輔、美津子、あっ死んだのか?まぁいい、とりあえず、見つかるとマズい」
セルジュニア、サイバイマンたちに指示を出しつつヤムチャは岩陰に隠れた。

一方、フリーザの元へと遁走したラディッツは初めて会うフリーザの戦闘力により
スカウターが爆発し左目を負傷してしまっていた。
(くっそー、この野郎!!よくもやりやがったな・・・)
内心の憤りを表には出さずラディッツはフリーザにこれまでいきさつを話して聞かせた。
「ほう、魔人ですか。それは面白そうですね。ねぇ、ダーブラさん。ほーほっほ」
ダーブラの方をちらりと見ながらフリーザは高らかに笑っていた。
「それにしてもサイヤ人がまだ生きているとは驚きましたよ。えーと、名前何でしたっけ?」
「ラ、ラディッツです。以後、お見知りおきを。」
深々と頭を下げたラディッツの言葉は次の瞬間見事に裏切られることとなる。
「残念ですがサイヤ人は生かしてはおけませんね。おやりなさいダーブラさん。」
「えっ!?」
(せっかくいい考えだと思ったのにヽ(`Д´)ノウワーン)
そして、ラディッツは逃げた。ひたすら逃げた。ヤムチャたちの隠れている岩場の方へと・・・
「ヤムチャさーーーん。助けてーーーー。」
「バ、バカ!?こっちにくんな。」
ラディッツのせいで見つかるのはゴメンだった。戦闘力には差があるが背格好は同じくらいである。
うまくいけばフュージョンで大幅に戦闘力を上がるかもしれなかったかと思うと怒りがこみ上げた。

「見つかるな、見つかるなよ。」
気配を消しながらラディッツが行き過ぎるのを待っていたヤムチャの耳元で誰かが囁いた。
「見ーつけたw」
「な!?魔人ブウ・・・」
魔人ブウが現れた。コマンド?

「くっそー、前門の虎、肛門に浣腸ってのはことだぜ。」
汚い言葉でののしりながらヤムチャは隠れていた岩場を飛び出した。
その間にも2体のサイバイマンがブウによってお菓子にされていた。
「ヤムチャさん!!助けに来てくれたんすね。」
「お前、まだ、生きてたのか?」
「そんな冷たいっすよ。」
背中合わせで戦闘態勢を取る二人、そして、その二人を挟んでブウとダーブラが対峙していた。

その頃、とある岩場に隠れていたピッコロの耳に再び『あの声』が聞こえていた。
『ヤム・・が・ぶ・い』
「誰だ、お前はいったい誰なんだ?」
正体の見えない相手に向かってピッコロは叫んでいた。
相手の声はかすれて聞こえなかったが、何かの映像がピッコロの心の中に直接入り込んできた。
二人の男を挟んで向かい合う異形の者たち、ここへ行けというのだろうか?
しかし、ピッコロはそれを考える間もなくヤムチャたちの下へ向かった。
『あの声』の正体を見届けるために・・・

(何だ!?ブウほどじゃないが恐ろしく強い気を持った奴がこっちに向かってくる、誰だ?)
ビリビリとしびれそうな恐怖感の中でヤムチャはピッコロの接近を感じていた。
そして、到着するピッコロ大魔王。
今、魔界の王・ダーブラ、ピッコロ大魔王、そして魔人ブウの三人がヤムチャとラディッツを取り囲んでいた
(もうだめぽ・・・あいつ、前にオレを殺した奴じゃねーか。)
ラディッツの股間から尿が滴り落ちた。

三竦みの状態から最初に動いたのはピッコロだった。
ピッコロはブウの後方へと回り込みその陰にラディッツ、そしてヤムチャが隠れたのを確認すると
ずべての気を開放した。最終奥義・爆力魔波だ!!

ブウに999のダメージ
ダーブラに999のダメージ
ラディッツに999の精神的苦痛
ラディッツは意識を失った!!

「くっ、ラディッツ!!」
ヤムチャは三人が体勢を崩しているのを確認するとラディッツを助けるために急降下した。
そして、ラディッツを掬い上げる途中でヤムチャの視界にあの男が飛び込んできた。
ヤジロベーだ!!
ヤジロベーはヤムチャに見つかったことに気づくと突然岩場に隠れた。
「あいつ・・・もしかして仙豆を」
そして、ヤムチャはラディッツを抱えたままヤジロベーの元へと向かった

「オイ、ヤジロベー!! 仙豆持ってんだろ? オレによこせ!!」
「な、オレは何にも関係ないぞ!! く、来るな、来るなーーー!!」
度重なる激戦の疲れと恐怖からヤジロベーは敵と見方の区別がつかないほど混乱していた。
「落ち着け、オレだ、ハンサムクールな熱血漢ことヤムチャだ!!」
逃げるヤジロベーの腕を捕まえ、彼の肩を激しくゆすりながらヤムチャは言った。
クールと熱血漢を混同するあたり、ヤムチャ自身にもかなりの混乱の色が伺える。
「ん?・・・お前は、や、ヤム・・・ヤムー、じゃなくてヤムチャ!!」
ヤジロベーの混乱はまだ続いている。
「仙豆、もってんだろ? 譲ってくれ、今は一刻を争う!!」
ヤムチャは腕の中のラディッツとヤジロベーを交互に見ながら、叫ぶように言い放った。
そうこうしている間にも気のせいかラディッツの顔はどんどん生気が失われていく(実際は恐怖から気を失っているだけなので、本当に気のせいである)。
彼らの隠れる岩陰のすぐ後ろではピッコロ大魔王、フリーザ軍、ブウの激戦が繰り広げられており、ときおり、その爆風が彼らの髪を激しくバタつかせる。
「わ、わかった!! ホレ、仙豆だ。 言っておくがそいつが最後の一粒だからな。」
「サンキュー、ヤジロベー!!」
ヤムチャはヤジロベーが投げつけた仙豆をパシッと音を立てて受け取った。
その直後、再度巻き起こった強烈な爆風で吹き飛ばされた巨大な瓦礫がヤムチャの頭に直撃した。
「いでぇぇぇぇぇーーー!!! 死ぬ、死ぬ、仙豆を・・・」

パク、モグモグ・・・ゴックン

「あー、死ぬかと思った。」
「テメェーーーーー最後の仙豆を!!!」
ヤジロベーの叫びが廃墟と化しつつあるキングキャッスルにこだました・・・。

ピッコロ大魔王、ターブラ+フリーザ軍、魔人ブウの三つ巴の激闘が背後で繰り広げられる中、
しばしの間ヤムチャ達は呆然と立ち竦んでいた。ヤジロベーはすさまじく気力を消耗し(ヤムチャのせいで)、
また体力も落ちてきていた。またヤムチャの腕の中のラディッツはかなり血色が悪くなっていた(ただの気のせいで)。
しかし我らがヒーローヤムチャはいまだ動かない。もちろん考えがあってのことだ。
(あいつらはお互いの攻防に必死になっている・・!と、取りあえず俺達の事は眼中にはないようだ。
そして力は均衡している。これでお互いが潰しあってくれれば俺達には好都合だ・・・・!)
そう思いつつヤムチャは見付かりづらい瓦礫の影にこそこそと移動していた。

フリーザとコルド大王達は上空から三つ巴の戦いを見下ろしていた。
「ターブラさんがわずかに押しているようですね、パパ。」
「うむ、やはりあの者を配下にしたのは正解だったようだな、息子よ。」
そんな会話の中、一つの高い戦闘力がち近づいてくるのをフリーザは感じた。もちろん、フリーザには
遠く及ばない戦闘力であったが、取りあえずそちらの方向を振り向くと、かつての臣下であった
美しいザーボンが華麗にこちらへと飛んできていた。
「おや、ザーボンさんお久しぶりですね。」
「お久しぶりでございますフリーザ様!もっと早くにフリーザ様のもとへ向かいたかったのですが、
こざかしいじじいに邪魔をされまして・・・」
そう言いつつ、ザーボンは目の前のかつての主人の圧倒的な威圧感に静かながらに驚愕していた。
ここまでであっただろうか、と。
「いえ、ちょうどよかったですよ。貴方に頼みがあります」
「はっ、なんなりと!」
「部下を十人貸します、そこらの岩陰にサイヤ人と何匹かの雑魚がいますので始末してきて下さい。」
「サイヤ人!?」
「ええ、大丈夫ですよ。戦闘力は貴方には及びませんから。けれど私はもう二度と同じ過ちは
しません。サイヤ人など・・・絶滅させてあげましょう!二度と私の目の前で見苦しくあがかぬように!
ホッホッホッホ・・・・」
悪の帝王の高笑いがザーボンの耳にひどく響いた。・・・そこには確かに静かな怒りがあった。

静かに隠れながらも戦いを見つめていたヤムチャ達。そこに上空から突風が舞い降りた!
「なっなんだ!!?」
目を向けると、そこにはフリーザ軍の鎧をまとい、スカウターを身に付けた十一人の戦士がいた!
「ひいいいいい!」
ぐったりしていたヤジロベーが素っ頓狂な声を上げる。栽培マン&セルジュニア達は警戒態勢に入った。
ラディッツは気絶していたが、恐ろしい戦闘力を本能で感じ取ったのか、更にさーっと血の気が
引いていった。
「ふっ、なんと低い戦闘力か・・・これでフリーザ様の恐れるサイヤ人とそのとりまきなのか。」
「あ!お、お前は俺が切り殺したやつと一緒にいたやつ・・・・じゃ・・じゃああの爺さんは」
ヤジロベーが弱々しい声を洩らすと、ザーボンはふっと皮肉な微笑みを見せた。
「頑張っていたよあのじじいは・・・だが所詮、ただのムシケラだっていうことさ」
ヤジロベーから血の気が引く。ヤムチャもガタガタと震え始めた。
「お・・・おい・・・その爺さんっていうのはまさか・・まさか・・・」
「・・・ふむ、確か・・・武天老子と名乗っていたな。」
その名を聞いた途端、ヤムチャは目を見開いた!
「・・・ちくしょう・・・ちくしょう・・・・ちくしょおおおぉぉおぉお!!!」
隠れるため抑えていた気をヤムチャは一気に開放した。その途端ザーボン達のスカウターが爆発した。
「なんだと!?」
ザーボンは驚きを隠せない。ヤムチャの体からは気がほとばしる。
「・・・・栽培マン康子達はラディッツを介抱してくれ。セルジュニア順達は俺と一緒にこいつらの
相手だ・・・・・!」
主人の命令を聞き、栽培マン達はラディッツを取り囲み、子守唄を歌い始める。セルジュニア達は
肩を組み、掛け声を掛け気合を入れる。
「・・・いくぞ貴様ら!!!新・狼牙風風拳ーーーーーーーー!!!」
「!!!」

・・・微妙にヤジロベーは忘れ去られていた。

「待てッッ!!ヤムチャッッ!!」
戦闘態勢に入ったヤムチャを制しする叫びが響き、ヤムチャは振り向いた。
叫んだのは意識を取り戻したラディッツであった。
「いま呼び捨・・・」
「生意気言ってすいません。しかしそうでも言わないと・・・今のあなたは逆上しすぎてらっしゃる」
「師匠を殺されて黙っていろと言うのか!」
「その師匠は何のために戦ったとお思いか!地球を守るためでしょう!?」
ラディッツの言葉にヤムチャは言葉を失った。
「あなたは全宇宙最後の希望なのです。こんなところで・・・命の危険を晒してはならない」
「サイヤ人というものは死に際にうるさくなるものなのだな」
ラディッツをあざ笑うようにザーボンが言う。
「雑魚とはいえ、フリーザ様はお前の存在を危惧してらっしゃる。・・・消えろ」
ザーボンは右手に気功弾を生み、倒れたままのラディッツに投げた。そして、爆発。
ラディッツの名を叫ぶヤムチャだが、ラディッツは無傷であった。セルジュニア達がラディッツを守った。
だがその時、ラディッツに気を取られていたヤムチャの背後にザーボンが襲い掛かった。それを、
「キキー!」
三体のサイバイマン、ガイ、オルト、マシュが防ぐ。
「えぇい!サイバイマン如きがうっとうしい!」
「無茶だ!お前達ではこいつには勝てない!・・・え?逃げろ、だと?」
「キキ、キキキー・・・」
「『三人で新しい技を開発した。もし良ければあなたに技の名をつけて欲しい』、だと?」
「キキ」
「・・・よし、格好いい名前をつけてやる。『トリプル・ウルフハリケーン・アタック』だ!」

ガイ、オルト、マシュの三体はザーボンを中心に渦を作るように周囲を廻る。
「キキキキ(トリプル・ウルフハリケーン・アタック)!」
オルト、マシュが同時に溶解液を放出した。逃げ場に困り、ザーボンは上に飛ぶ。
が、そこにはザーボンの動きを読んだガイが待ち構えていた。背中に取り付き、自爆。
「くそッッ!!ガイ!!」
叫んでから、ヤムチャはラディッツの元へ走った。ガイの死を無駄には出来ない。
「ここはあいつらに任せる。俺たちは逃げるぞ!」
「俺も残って戦います」
「だめだ。ザーボンとかいう奴が言っていただろう・・・フリーザはお前の存在を、全宇宙最後のサイヤ人
の存在を恐れていると。お前も俺も、宇宙最後の希望なんだ」
「しかし・・・どこへ逃げるつもりで?」
「逃げるんじゃない。この事件の黒幕を探すんだ。それが出来る婆さんを知ってる」
ヤムチャは爆風で傷ついたラディッツを抱え、飛んだ。そのまわりをセルジュニア達が守る。
「逃がすな!お前達!」
が、ザーボンがそれを許さなかった。十人の戦士がヤムチャ達の前に立ちふさがった。
「貴様ら・・・邪魔だ!!」
ヤムチャが叫ぶと同時に、ザーボンの部下の一人が吹き飛んだ。セルジュニア順であった。
「すまない・・・ここはお前に任せた!」
残ったサイバイマンとセルジュニア、ラディッツを連れ、ヤムチャは戦闘空域を離脱した。
黒幕を探し出すことが出来る者、占いババを目指して。


ブルマは考える。
敵の正体は誰か。答えは既に出ているが、信じたくない。だから、考える。

まず、敵はDBの事を知っている。
DBとはブルマの知る限り、地球上のほとんどの人間が知らない物である。
大抵の場合、DBを見た者はそれが綺麗な石だと思う程度である。
その力までは考えつかないのが常識だ。

さらに、仮にDBの力を知っている者がいたとしても、
その事の詳細まで知っているとは考えづらい。
DBに関する伝説は、DBを
”どんな願いも叶える魔法の玉”
としている。むろん、実際は違う。だが伝説上はそうなっているのだ。

だとすれば、DBを集め、孫悟空達を消した者は
DBの伝説外の力を知っていることになる。
この伝説を信じる者であれば、DBを使い
「孫悟空とその仲間達を消してくれ」
と頼むはず。

しかし、DBの力ではこの願いは叶わない。
DBを使って、孫悟空を消すにはDBの力の限界を知らなくてはいけない。
力の限界、すなわち、デンデの能力の限界。
これを知らなくてはいけない。

だとすれば、これだけの事を知っている人物は誰か?
答えは簡単だ。その人物はブルマのよく知っている者のはずだ。
でなければ、このようなことを知りうるはずがない。

「その・・・今から会おうとしている婆さんってのは何者なんです?」
ラディッツは多少不安げにたずねた。逃げている自分に怒りを覚えながらも、同時にほっとしている事にも
気づき、そんな葛藤を紛らわす意味もある質問だった。
「名前は、占いババ様と呼ばれている。その人は・・・すまない。その人はあいつらに殺された武天老師
という方の、姉上であられる。」
ヤムチャはそう言うと、うなだれた。
「で、では、それを知ったら悲しむでしょうね・・・」
ラディッツは間の悪い質問をした自分に自己嫌悪を覚えた。
「・・・そう落ち込むな。変わってる人だからな。意外とショックは受けないと思うぞ。・・・それに
もう知っているだろうしな・・・。」
ヤムチャは溜息をつく。
「その人は、水晶球でこの世界のありとあらゆるものが見えてしまうんだ・・・。」
「もっとも、それだけなら、カリン塔って所に登ればいい。しかし、占いババ様は探そうと思ったものを
念じるだけで見つける事ができるんだ。・・・例えば、今回DBを使った悪人を探して欲しい、とかな。」
「なるほど・・・」
ラディッツは頷いた。
「それに、あの方ならあの世にいくこともできる・・・悟空達にも連絡を取れる・・・待てよ?」
ヤムチャは自分が勘違いをしているのに気づいた。
「そうだ! なぜ、あの世から悟空達の連絡がこない・・・つまり、悟空達は死んでいないのか?」
「え?」
ラディッツは急にヤムチャが自分の知らない事を言い始めたので、困惑した。
「いや、まて・・・落ち着けよ。もし、あの世で界王様達にも何かあったとしたら・・・なるほど。」
ヤムチャはすぐには、答えが出そうにないので、ひとまず考えるのをやめておいた。そして、困惑の
表情を浮かべているラディッツにフォローを入れる。
「・・ああ、すまない。余裕ができたら、後で色々説明する。・・・今は急ごう」
「はいっ!」
ヤムチャ達は、一路占いババの元へと向かった。

「ど、どうなっているんだ、これは・・・?」
ヤムチャ達はその惨状に驚愕した。かつてそこらの施設が束になってもかなわないような、豪華な造り
を誇る、占いババの住居は、跡形もなく破壊されていた。
はやる気持ちを押さえ、ヤムチャは奥へと駆けていった。
「な、なんてことだ・・・」
占いババは、奥の薄暗いホールにに確かにいた。しかし、壁に縫い付けられるような形ですでに事切れて
いたが。
これで、手がかりが無くなった・・・そう思ったヤムチャはもう一つの矛盾に気づいた。
「そういえば、神様・・・デンデはこういっていたな・・・」
ヤムチャは少し前の記憶を思い出した。
「「悪の気を持つ者がドラゴンボールを使おうとしてる」、と」
「なあ、ラディッツ・・お前たちでも良い。」
ヤムチャは、仲間達を見回して聞いた。
「もし、お前たちが、あるアイテムを使おうとしている。しかし、この星のどこにいてもそれを見抜ける
奴がいる。見つかりたくはない・・・どうする?」
ラディッツはしばらく考え、こう答えた。
「多分・・・その者に分からないような「術」でもかけるか、そういう場所を用意するでしょうね。」
「例えば、この星以外で使う、か?」
「そうですね。オレならそうします。」
「なるほど・・・よく聞いてくれ。そのアイテム・・・知ってるだろう? ドラゴンボールだ。それ
を使った奴は、はっきりと分からないんだが、悪の気を持つ者がとにかくドラゴンボールを使ったのが
分かった。そして、悟空達主力がどういうわけか消されて、なぜかフリーザ達だけが残ってる。そういう
状況なんだ。」
ラディッツ達は頷いた。
「そしてな・・・ここから悪いニュースなんだが、占いババ様の館を知っている者は多くても、ここまで
破壊できる奴なんてのはいないんだ。・・・オレの知り合い以外では、な。なにしろあの世から護衛を
いくらでも連れてこれるんだからな。」
ヤムチャは息を一つつくと、後を続けた。
「勿論、フリーザ達なら破壊できるだろうさ。が、来る途中で見てるとは思うが、占いババ様の館以外は
攻撃されていない。 おかしいじゃないか? なぜ、フリーザ達はこんななんでもない場所だけを破壊
する必要があるんだよ?」
「それで、どういうことなんです?」
ラディッツは悪い予感を抱きながらも、先を促した。
「つまり・・・攻撃した奴は占いババ様の価値をしっていたんだ・・・少なくとも、その見つけなきゃ
いけない奴には、地球人の協力者がいる。そういうことだろうな。」
ヤムチャは苦い顔をした。
「しかもドラゴンボールまで知っているとなると、今の所、オレや悟空の知り合いの可能性が高いぜ・・
どういうことだ?」
「この方の死と、今回の危機が別という可能性は?」
「二つの事件は関連していると考えた方が自然だ・・・やな予感がするな。今回ばっかりはヤバイかも
知れない・・・」
「そうだ! 例えば、この方が、その護衛に殺された、という可能性は?」
「・・・なるほど、いやそれはないだろうな・・・この方はそんな迂闊な人じゃない。」
そういいつつも、ヤムチャはその可能性も一応考慮しておくことにした。
「・・・とにかく、いつまでもこのままでは占いババ様が気の毒だ・・速く弔って・・・」
「・・・その必要はないぞ」
入り口から声が聞こえた。
「・・・なにっ、・・・ザーボンか!!」
「その通りだよ、哀れな原住民め・・・」
ザーボンは不敵な笑みで答えた。
「いい機会だ・・・ここでお前を殺してやる!」
ラディッツは前に出て、速くも戦闘を開始しようとする。
「ま、まてバカっ、わざわざ死ににいってどうする!」
「そ、そんな・・・まるでバカみたいに言わないでくださいよ・・・」
ラディッツは急に弱腰になった。
「こ、この際だからはっきりいってやる! お前達サイヤ人はみんなバカばっかだ! だいたいなあ
個人の技術は高い癖に、傲慢さがあるせいですぐスキを突かれるわ、チャンスを見逃すわ、戦闘民族
って割には、全く協力しようとしないわ・・・お前ら、プロとしてはみんな2流以下だ!!」
「そ、そこまで言わなくたって・・・だいたいヤムチャさんだって、2流じゃないですか!」
「な、なんだと、この荒野の狼に向かってよくそんな口を・・・」
「なんですかそれは、あんたは、足元がお留守な奴として、あの世でも有名だっ!」
「おまえらっ、いいかげんにしろっ!」
ザーボンは自分を無理して言い争いをし始めた二人を見て、ついにキレた。そしてその隙をヤムチャ
達は見逃さなかった。
「いきなりカメハメ波!」
ドウッ!!
事前の打ち合わせもなしで、いきなりヤムチャ達はタイミングを合わせてそれぞれ技を放った。
完全にふいを突かれたザーボンは為すすべもなく吹っ飛ばされた。
ヤムチャ達はお互い顔を会わせるとニヤリとした。
「完璧なタイミングだったぞ・・・上手い演技だった。」
ヤムチャはラディッツを労った。
「いや、最初出た時は半分本気だったんすよ・・はっはー!」
ヤムチャは冷や汗をかいた。
ガラガラ・・・
「ちっ、あれでも死んでくれないか・・・」
そこには、怒りに顔を歪め、醜く変身したザーボンがいた。
「よくも・・・・やってくれた・・・」
「どうしたザーボンさん・・・今ので大分パワーが減ってるんじゃないか?」
「ナメるなよ・・・お前達ごときザコを殺すのに、この程度のダメージ、なんでもない!」
(しぶとい野郎だ・・・だいたい、セルジュニアの攻撃を耐えれるわけがないんだが・・)
挑発しながら、冷静にヤムチャは考えた。今の状況から考えて、1vs1で戦って勝ち目はない。先手を
取り速く勝負を決める必要があった。
「こうなったら、時間の関係もある。CMも近い! カ○メやロ○トの宣伝を流さない訳にはいかない
んだ! 反則技だが、CM前で話を区切らす為に決めさせてもらうぞっ!」
「合わせろよ、ラディッツ!」
「おうっ!」
ヤムチャがラディッツの前に素早く移動し、少し左にずれると、両手を前にだし、右に向かって円を
作るような不思議な構えをとった。
「萩○先生御免なさい! 時間の関係でオマージュいきますっ!」
「小○類(チャイ○ド)はどうかと思いますっ!」
二人は良く判らないセリフいや呪文を唱えた。これはこの技を使う為の儀式であった。
「ぐ・・・」
ヤムチャは致命的な事に気づいた。肝心の呪文や技の名前を出すと・・・色々マズイ。しかし、時間
が迫っていた。アニ○スタッフが青筋を立てているのが見えたような気がした。ここでビシッと決め
ないと、後でどう自分が描かれるか不安だった。
「ほら、どうした・・・撃ってみろよ! それとも只のこけおどしか」
ザーボンは嘲笑を浮かべた。
「くっ、真剣勝負に呪文なぞ関係ないわー! 勢いだよ、勢い!!」
「いくぜっ、タッカラプトォー!!」
「ポッポルンガッ!」
ラディッツも調子を合わせる。ちなみにこの間、ザーボンは何もせず、じっと待っている。そういう
約束事があった。
「プピリット!」
声がハモった。そして、ヤムチャが腕を組んで作った円に向かって渾身のエネルギー波を放つ。
「パロォォォォォオー!!」
そして、ヤムチャが叫んだ瞬間、その円の中に力場ができ、瞬間的にエネルギーが爆発的に増幅した。
増幅されたエネルギー波は一気にザーボンの元へと押し寄せる。
「そ、そんな馬鹿なァー!」
ザーボンは壁を突き破り、空の彼方へと吹っ飛んでいった。
「よし、ここにいてもしょうがないっ、移動しよう!」
「次はどこに向かいましょう?」
「ブルマの所に行こうと思うが、途中で行き先を変えるかも知れない。とにかく動きながら考える!」
「了解!」
ヤムチャ達は占いババの元を後にした。
カプセルコーポレーションへ急ぐヤムチャとラディッツ。もちろん,できるかぎり警戒して,だ。なにせ,今の地球には自分たちをはるかに超える強敵たちがのさばっているのだから…。
ヤムチャは,生き残った栽培マンとセルジュニアたちも自分たちの方へ向かっているのを感じていた。(セルジュニアは気を探れると設定します)
ヤムチャ「減ってしまったな…クソっ!」
ラディッツ「ヤムチャ……さん?何を怒ってるんすか?」
ヤムチャ「もとはといえばお前のせいだぞ!お前があのとき取り乱すから!あのとき,俺とお前で…あとセルジュニアたちがフュージョンすれば…」
ラディッツ「フュー…ジョン?なんすか?それ」
ヤムチャ「まぁいい!どっちにしろお前にはすぐに覚えられなかったかもしれんしな!」
何か意味もわからず罵られたラディッツは少しムッときたが,確かにあのときの自分の行動は反省すべきものだったと思った。
(混乱していたとしてもサイヤ人狩りしているフリーザに媚びようとするなんて…。本当ならあのときみんな死んでいただろう…運がよかったんだ…いや…それより…裏切った俺をヤムチャさんは……)
1人物思いにふけるラディッツ。これほどまで他人に優しくされたことがあろうか…,こんなに他人を頼もしく思えたことがあろうか…ラディッツの心の中に今までなかった感情が芽生え始めていた…。

カプセルコーポレーションに到着する前に栽培マン・セルジュニアたちと合流することができた。なぜかヤジロベーもセルジュニアの背にまたがってついてきた。

――キングキャッスル。
ダーブラ・ブウ・ピッコロ…三つ巴の戦いは未だ続いていた。しかしついに均衡が破れるときがきた。決着という形ではなく,離脱という形で,だが。
離脱したのはこの戦いでもっとも不利だったピッコロであった。莫大な魔力を誇るダーブラに体力無限で再生能力のあるブウが相手ではさすがのピッコロにも疲れが見え始めた
ピッコロ「少々,パワーの使い方が慣れておらぬのでな…」
スキをみてその場を脱する。嫌な予感がしたフリーザとコルドはすぐさまその後を追う。逃げるピッコロだが何か手があるのか,その顔には微かな笑みが浮かんでいた。

ブルマの部屋に集うヤムチャ軍団とブルマたち。彼らがカプセルコーポレーションに入ったとき,ブルマたちは当然腰を抜かし大騒動となったが,ヤムチャによって何とかおさまった。
ブルマ「ベジータも孫くんたちもいない今,ヤムチャ…あんたが頼りなのよ!」
ヤムチャ「わ…わかってるよ!だからこうして頑張っているんじゃないか…,それより気になることがあるんだが,ヤジロベーのパワーがずいぶんあがってるのは何でなんだ?」
ブルマ「はぁ?何言ってんの?ほんのちょっと前に占いババさんが占いでこう言ったじゃない『地球に近々危機が訪れる。今度は皆の力が必要になってくる』って。」
ヤムチャ「え……マジ?で,どうつながんの?」
ブルマ「だからぁ,それで亀仙人のじいさんやそこのヤジロベーくんとかまで引き連れてナメックに行ってパワー引き出したんじゃないの!あんたもいたでしょ!」
ヤムチャ「え…いや…?オレ…まったく知らないけど…」
ヤジロベー「かぁ〜…ダメだこいつ。来る途中,栽培なんたらもなんとかジュニアとかと話したけどよ,ずいぶん不満言ってたけど気持ちがわかるぜ」
ヤムチャ「うるせぇ!って言葉わかるのかよ!…いや問題はそこじゃねぇ!…おかしいなぁ…あ…!そうだ!それよりプーアルは大丈夫だよな!?」
ウーロン「あれ…?そういや…いないな。いつのまにかいなくなってたな?」
ヤムチャ「な,なにぃぃぃぃ!!て,敵にやらわれたんじゃ…バッカやろぉ!なんで目をはなすんだよ!」
ブリーフ博士「ヤムチャくん」
ウーロン「目をはなすって…プーアルだってガキじゃないし…」
ヤムチャ「ガキとかじゃなくて!なんですかっ!ブリーフ博士!」
ブリーフ博士「そこの栽培マンくんとセルジュニアくんたちの名前がまだ決まっていないのなら私につけさせてもらえないかね?いい名前考えてみたんだがね,今」
ヤジロベー「新しい主人はオレでどーよ?」
ブルマ「あれ?よくみたらあんた,孫くんのアニキじゃないの!なんでここに!?」
ラディッツ「あ!あのときはどーも!」
ブルマ「ぎぃやぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ヤムチャ「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
ヤムチャの叫び声がカプセルコーポレーションに響きわたった。

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カプセルコーポレーションに集うヤムチャ軍団。なんかいろいろあって疲れたんで
今日はとまることにした。夜中、ラディッツがトイレに起きた。
「うわっ!便器の中に髪の毛が入っちまって出来ねえよ」
「・・・手伝ってやろうか?」
「ああ・・・頼む・・・お、お前は!?」
カプセルコーポのトイレが大爆発を起こし、爆音でヤムチャ達が目を覚ました。
現地には上は戦闘服、下はフルチンというラディッツの死体。
「だ・・誰がこんなことを・・・」
仲間の死にガクガクブルブルのヤムチャの耳にどこかで聞いたような声が。
「よう・・・お前には借りがあったな・・・・」
「お・・お前は・・・ナッパ!?」
ヤムチャ達の上空には皮ジャンにサングラスという身なりのナッパの姿が。
「地獄から舞い戻って来たぜ。Iam be Backだ!!」
(I 'll be Backだろバカヤロウ・・・)
栽培マン1号がぼやいた。ナッパは口をカパッと空けてΧ光線を発射した。
「あぶない!逃げろ!」われ先に逃げるヤムチャ。逃げた先にはブリーフ博士の自慰の姿が。
「ヤムチャ君か・・・ふう、近頃まったく元気がなくてな・・・」
「お義父さん!そんなことをしてる場合じゃ!」といいつつもズボンを脱ぎだすヤムチャ。
そこにはブルマのシャワーシーンが。「ひ・・久々ですよ!お義父さん!」
だが、ナッパのΧ光線がバスルームを直撃し、ブルマは吹き飛ばされてしまった。
「ブルマー!!」全裸で走り出すヤムチャ。「ヤ・・・ヤムチャ・・」
ブルマは息絶えた。怒りのこみ上げるヤムチャ。全裸の男が上空のハゲに向かって行った。


「いいかげんにしろ、クズ野郎・・・罪のない人を何人も殺しやがって・・・」
「オレは怒ったぞ!!!ナッパぁぁぁ!!!!」
ヤムチャは、スーパーサイヤ人化した。
「ワシは怒ったぞ!!!ナッパぁぁぁ!!!!」
ブリーフ博士も、(ティ○ポが)スーパーサイヤ人化した。
全裸で仁王立ちする、二人の変態。
「20・・・・25・・・・30・・・ば、バカな!!!?こいつら、30センチを超えやがった!!!!!」
ナッパは貞操の危機を感じていた。

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ラディッツ「・・・・と、いう夢を失神してる時に見たんだが・・・・」
ヤムチャ「はあ!?いや、あのな、今はそんな場合じゃ・・・ないけど・・・・お前、大丈夫?」
ブルマ「・・・・・」
ヤジロベー「・・・・・」
ラディッツ「はあ・・・自分でもやばいかなあと・・・」
ブリーフ博士「うーん、夢には何かいろいろな意味があるというよ。その時の精神状態を
 表していたり・・・あと、予知夢、とかもよく言うよね。」
ブルマ「父さんはいいのよ!!もう、そんなことよりもこれからどうするの!」
ヤムチャ「ああ・・・うん、そうだよな、そう」
ラディッツ(予知・・・・確か、死んだ親父にそんな力があったような・・・・)

そのとき大きな爆音が聞こえた。近い、明らかにカプセルコーポレーション内での爆音だった。
ヤムチャ「なんだ!?」
ヤムチャたちは部屋から出て爆発音のした方へ向かっていった。そこはトイレのあった場所だった。
崩れた瓦礫の中には・・・
ヤムチャ「!!!お、おまえは!!!」

ナッパ「へへへ・・・良くもさっきはやってくれたなああこのヒヨッコがああ!!」
ヤムチャ(うそだろーーーなんでだよ明らかに粉々に俺がしたじゃねえかよーー・・・!
 ギャグマンガじゃないんだからこういうの無しだろーーー!?
 しかもかなり戦闘力上がってるよーーこいつザーボンよりつええんじゃねえの・・・!?)
ヤジロベーがブルマ達非戦闘員と共に避難する。18号とラディッツそしてセルジュニア栽培マン達は残った。
18号(なんだこいつ!・・・あたしより強いんじゃないか・・・なにより凄みがある!)

これは一体どういうことだろう、とラディッツは考える。
ラディッツ(トイレ・・・は夢で俺が殺された場所・・・そしてナッパ・・・皮ジャンとサングラスでは
 ないが・・・・これはいったいどういうことだ?まさか・・・)
ナッパ「おお!ラディッツじゃねえか、なんだお前こいつらに寝返ったのか。フン、
 恥ずかしいやつめ。お前こそ一族の恥だ、死んでしまえ!」
ラディッツに襲い掛かるナッパ。はやい!!ヤムチャには影が通ったように見え、18号には微かに目で追える
程の早さだった。勿論ラディッツにかわせる筈はなかったが、栽培マンの1人がラディッツの盾になり
ナッパの攻撃を受け死亡した。
ラディッツ「栽培マン百合子さーーん!ああ・・・!」
ナッパ「く、栽培マンに庇ってもらえるとは偉くなったな、ラディッツ。」
ラディッツは歯を食いしばった。ラディッツの気が上がっていくのがヤムチャには分かったが
ラディッツはヤムチャと18号を掴んで逃げ出した。
ヤムチャ「なにをするだーラディッツ!!お前は俺以上のへたれかーー!!!」
ラディッツ「違うんです!ここは逃げないとやばいんです!!予知を回避しなければ!」
18号「なんだって!?」
ラディッツ「俺が見た夢はきっと予知なんです!オヤジのように完璧ではない、
 きっと未熟だからめちゃくちゃになってるけれどもそれでもきっと予知なんです!
 でもだからこそきっと回避できるはず・・・!多分!
 あとブルマさんと・・・ええーとある意味ブリーフ博士もやばい!
 取り敢えずカプセルコーポから出ましょう!・・・それにもし本当に
 予知だとしたら・・・この黒幕が俺の予知でわかるかもしれない・・・・!」
ヤムチャ「なんだってーー!?」

天界… かつて自分が生まれた場所… 自分の分身が既にそこにいないことは感じていた。
が、同時にそこに自分と同じ誰かがいることはわかった。
(同じ? なぜそう思う?)
自問する…が、答えは出ない。
そしてピッコロがついた時、――自分と同じ――緑の肌の青年が出迎えた。
「あなたを待っていました。」

デンデはピッコロが近づいてくる間、考えていた。
(ピッコロ大魔王はなぜ自分のところへ来るのか?なぜこれほどの強大な力を身につけているのか?なぜヤムチャさんを助けたのか?そしてなぜ自分はドラゴンボールが使われる前からこの人の気を感じていたのか?
なぜ?なぜ?なぜ?)
しかしその後ろから近づいてきていたフリーザ親子の気を感じた時、全ての問いは消えた。

「僕と融合してください。」

少なからずピッコロは驚いた。が、すぐに威圧するように切り返す。
「貴様は新しい神の様だが、このわしを誰か知らんのか?かつての神も忌み嫌った。邪悪な存在なのだぞ?」
デンデは動じず答えた。
「今から来るフリーザという奴は、僕の… 僕らの故郷、ナメック星を破壊しました。」
(…ナメック星?… わからない… だが… 懐かしい…)ピッコロが考えている間もデンデは続けた。
「たくさんの同胞たちが奴らに殺されました。村の人達も、長老も、そしてカルゴも…
もちろん、ドラゴンボールでナメック星は復活し仲間も生き返りました。
しかし、フリーザは蘇ってしまった!」
デンデの声が自然と大きくなり、体が震える。
「フリーザが生き残ったならどうするでしょうか?
またドラゴンボールを集めようとする? ナメック星の時のように地球を破壊する?
再びナメック星が狙われる? あいつがいる限り、あの悪夢は繰り返されてしまう!
あいつは倒さなければならない! あの悪魔はこの世に存在していてはならない!!」

そしてピッコロは気づいた。自分の体もまた震えていることに…
(恐怖ではない… 体の底からこみ上げる何か…)

「だから… 僕の力を使ってください。」


そして…
フリーザとコルドが天界についた時そこにいたのは

たった一人のナメック星人――

<つづく>



(つづく)

 


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