ドラゴンボール最後の願い

 

 

第39話 ドラゴンボール最後の願い

 




悟空「まいったな……。三分くれぇしかもたねぇなんて。」

目の前の邪悪龍を絶望のまなざしで見つめながら悟空はつぶやいた。

ベジータ「ちぃっ……。いけると思ったのに……おしまいか……!」

ベジータも吐き捨てるように言い放つ。
超サイヤ人4同士のフュージョンはわずか3分…いやもっと短かったかもしれない…そんな短時間しか許されなかったのである。二人に戻ってしまった悟空とベジータ。
単体ではあまりにも差がありすぎる。どうひっくり返っても勝ち目はない。
そんな弱気な思いが二人にこみ上げてくる。
しかし,新世代の戦士たちが彼らの尻を叩いた。

悟飯「父さん。元気玉です。……ボクたちがそれまでくい止めますから」

悟空は最後の賭けにでた。
宇宙中の元気を集めればヤツを倒せるかもしれない。
東西南北の界王の力を借り,高々と手をあげて宇宙から元気を集める悟空。
諦め賭けていたベジータも含め,悟飯,ウーブ,悟天,トランクスが時間を稼ぐために決死の覚悟で戦いを挑んだ。
しかし邪悪龍のパワーはゴジータとの闘いで半減させられたとはいえ,まだまだ悟飯やベジータの相手としてはあまりあるものだった。

ベジータ「く……やはり無理だ。オレたちでは……」

彼らの攻撃では邪悪龍に蚊が刺したほどのダメージすら与えられない。
逆に邪悪龍は虫けらを扱う如くベジータたちを翻弄する。

悟空「くそっ。まだだ!!」

上空で元気玉を作り続ける悟空は仲間たちが次々とやられていく姿をただ見ているしかできなかった。
悟空以外のすべての戦士たちが地に伏し,さらに悟空までも狙われかけたそのときだった。
……思わぬ人物が現れたのだ。

ヤムチャ「やめろォォォ!プーアル!!」

力の限り叫びながらヤムチャが飛んできたのであった。

悟空「あいつが…プーアル!?」

驚きの声をあげる悟空。ヤムチャは悟空を見ずに邪悪龍に話しかける。

ヤムチャ「プーアル。もうやめるんだ。お前の魂はこんなこと望んでない」

邪悪龍「バカめ。まだわかっていないのか。
プーアルの魂はオレがこの世界に具現するための道具にすぎん。
……プーアルの意志などとっくに消えている。このようにな……」

邪悪龍が指をはじく。

その風圧だけでヤムチャの左腕がふっとんだ。
痛みすら感じさせないほど速く……。

邪悪龍「言ったはずだろ。次に会ったときに殺すと」

しかしヤムチャは吹っ飛ばされた腕をちらりと見ただけですぐに邪悪龍の方へ顔をむける。そして優しく,静かな声で邪悪龍に語りかけた。

ヤムチャ「プーアル……お前の魂は聞いているはずだ……オレの声を」

邪悪龍「間抜けめ」

そういうと邪悪龍は再び指をはじく。

ヤムチャの右腕が飛ぶ。

ヤムチャ「プーアル……いっしょにこいつを倒そうぜ。オレたちで……」

激痛が走っているはずなのにヤムチャの口調は変わらなかった。

まるでいつもプーアルに話しかけていたように優しく。
しかしヤムチャの両腕からはおびただしい血が流れ続けている。

邪悪龍「おまえ。まさかプーアルの理性が残っているなんて思っているんじゃないだろうな?」

ヤムチャ「へへ……プーアル……一緒にあの世で……楽しく…くらそうな……」

邪悪龍を無視してプーアルを呼び続けるヤムチャ。
そんなヤムチャに何の躊躇いもなく邪悪龍はついにトドメをさそうと動いた。

 


ズブ……

 

ヤムチャの腹部に邪悪龍の腕が突き刺さった。あまりにもあっけなく。
邪悪龍にとっては花をむしりとるくらいの感覚だっただろう。
それでもヤムチャの口を封じるのに十分だった。

ヤムチャ「…ぅぉッ……」

小さくもれるうめき声。

ヤムチャの腹部に邪悪龍の腕が沈み込んでいく。


邪悪龍「これでわかったよな?」


ドバッ…

腕を引き抜くと多量に血が吹き出す。


全身の力が一気に失われヤムチャは地へと落下していった。
その様子を邪悪龍は何の感情もなく見つめていた。


そのとき,悟空の超元気玉ができあがった。
もちろん邪悪龍を完全に消し去ることができるほどの威力を備えている。

しかし……

悟空は焦った。

邪悪龍の動きが速すぎるのだ。

ブウやフリーザのようにまともに受け止めるほど邪悪龍は冷静さを欠いていなかった。

邪悪龍「無駄だったな。そんなものをまともに受け止めるわけなかろう。
避けることを想定していなかったのか?」

繰気弾のように操っても莫大の気の塊を高速で移動させるのは無理だ。
巨大な元気玉はうなり声をあげながら上空で邪悪龍を追い続けている。

悟空「くそっ……あたらねぇっ……」

邪悪龍「悪あがきはもう終わりのようだな。」

余裕の笑みを浮かべ邪悪龍は,悟空を目指した。一直線に。

 

もうだめだ!

 


倒れているベジータたちは朦朧とした意識の中でそう感じていた。

しかし奇跡はおきた。

 

地上に落下したヤムチャの意識は既に消えかかっていた。
しかし,ヤムチャは薄れてゆく意識の中で願い続けていたのだ。

 

 

 

ヤムチャ(邪悪となってしまった神龍よ……)

 

 

 

ヤムチャ(どうかプーアルを……)

 

 

 

 

ヤムチャ(破壊獣のまま逝かせないでくれ……)

 

 

 

邪悪龍「なにっ!?カラダが動かない……!?」

 

動きの鈍った邪悪龍に悟空はここぞとばかりに元気玉を向かわせる。

まるで殻がやぶけるように、邪悪龍の体がひび割れはじめていた。

 


パリンッ

 


邪悪龍のカラダが砕け散った。


悟空「!!」


悟空は見た。爆ぜた邪悪龍の中からプーアルのカラダが出てくるところを。
しかしあまりにも突然のことで元気玉の激突は避けられなかった。
元気玉はプーアルの肉体ごと負のエネルギーを飲み込み,そして宇宙の彼方へと消えた。


悟空「すまねぇ………。プーアル……」

 

戦いは終わった。
黒雲が消え去り,青い空が顔を出し始める。

邪悪龍が消滅したのと時を同じくして,ヤムチャも息だえていた。

皆はヤムチャの亡骸の元に集まる。


パン「えっぐ,えっぐ…おじいちゃん,ヤムチャさんとプーアルさん…
どうにかして生き返らせることできないの?」
パンが顔をくしゃくしゃにして悲痛に訴える。
わずかな間だったが,世界を駆けずり回った仲なのだ。

悟空「すまねぇ…パン。ドラゴンボールは消えちまった…」

ピッコロ「ナメック星のドラゴンボールもやはり今回の騒動で封印するそうだ…」

パン「そ…そんな…」

言葉を失うパン。だが,誰も慰めの言葉をかけてやれない。
どうしようもないのだ。

悟空「……すまねぇ。ヤムチャ……」

悟飯「しかし…父さん……あのときなぜ邪悪龍の動きが止まったんでしょう…。」

悟空「オラにもわかんねぇ……。
だが,あんときヤツが止まらなかったら,元気玉は当たらなかっただろうな…。
オラ見たんだ。あいつのカラダの中からプーアルのカラダが出てくるところを…。」

悟飯「じゃ…じゃあ…プーアルさんが何かしてくれたんでしょうか……」

悟空「よくわかんねぇ…。だが……案外,きっかけを作ってくれたのはヤムチャとプーアルだったのかもしれねぇな……」

悟飯「ヤムチャさんとプーアルさんの絆によって、邪悪龍の負のエネルギーが弱まり、本来の神龍のパワーがわずかに戻ったのかもしれませんね…。

そして、ヤムチャさんの悲痛な願いを叶えたのかもしれない………」

悟空「そうかもな…………。」

誰にも明確な答えは出せなかったが,
まさにドラゴンボール最後の願いを叶えたのはヤムチャだったのかもしれない……。

 

<Fin> 

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あとがき;うぅ〜ん。後味悪いかなぁ。やっぱり後日談を付け加えてみるか…。