×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

きっかけ2

〜ヘタレへの道、最強への道〜

 


少年ヤムチャ――。

すでに親はなく,荒野で旅人を襲っては金品を巻き上げていた。

治安の悪い世の中である。中にはボディーガードをつけるものもいる。

たぐいまれなる武術の才を持つヤムチャでも,時には敗走することもあったが

強敵はヤムチャの潜在能力を引き出す結果となった。

 

 

ヤムチャは13歳になっていた。

もはや彼の相手になるような者は現れず,彼自身も己を無敵と信じていた。

伝説となっている武天老師や孫悟飯,牛魔王などをのぞけば……。

 

ある日――。

相棒のプーアルがアジトに飛び込んできた。

ヤムチャ「なにっ!? ドクダミ盗賊団が?」

プーアルの話だと,ヤムチャのなわばりに他の盗賊団が入り込み,旅人を襲っているらしい。

ヤムチャ「人のエモノを横取りするなんて…盗賊の風上にもおけねぇ!行くぞ!プーアル!」

意味不明なことをほざいて,ジェットモモンガに乗るヤムチャ。

ヤムチャたちが盗賊団を発見したとき,連中は老婆を襲っていた。ヤムチャが近づいてきたのに気づく子分たち。

盗賊A「げっ!アニキ!ハイエナのヤムチャですぜ!」

親分「見つかった!ひぃぃぃ」

ヤムチャ「逃がすか!狼牙風風拳!はいはいおぅ〜〜」

秒単位で瞬殺される盗賊団。ふりかえると行商のような老婆がしゃがみこんでおびえている。

ヤムチャ「さてと…ばあさん。立てるかい?」

老婆「あ……すまんね…お兄さん。もう少しでおかされるところだったわい」

ヤムチャ「いや,それはないと思うが……で,こっちもボランティアで人助けしたわけじゃないんだ。礼の方ははずんでくれるよなぁ?」

老婆「もちろんじゃ。命の恩人じゃからな」

先ほどの連中と同業だと気づいていないらしく,礼を考えている老婆。

老婆「いいものがないのぉ。どうじゃ一夜だけなら……」

ヤムチャ「金でもカプセルでもいいんだよ!」

老婆「そうじゃ!おぬし…強さに興味があるかね?」

ヤムチャ「……そりゃぁな。男なら誰しも強さに憧れるだろう。で?」

老婆「この鈴をあげよう。この鈴はな,おぬしが最強になれる世界へ導くと言われている」

ヤムチャ「はぁ?なにそれ…」

老婆「この鈴を肌身はなさずもっていなされ。扉が開くだろう」

 

 

ヤムチャ「うまいこと言いくるめられちまったなぁー。……こんな鈴」

アジトでねっころがりながらぶつくさ文句を言っているヤムチャ。

プーアル「でもホントなんですかね」

ヤムチャ「ウソに決まってるだろう」

チリーン。ヤムチャが鈴をふる。……ふと,ヤムチャのまわりにじょじょに霧がたちこめはじめる。

ヤムチャ「う…ウソだろ!?」

プーアル「ヤムチャさま!」

ヤムチャ「プーアル!オレから離れるな!」

たちまち視界は真っ白。

ヤムチャ「どうするんだよ……どこだよ。ここは…」

プーアル「その鈴をたたき壊せば…」

ヤムチャ「あのばあさんの言ってたことにも興味がある…手探りで進んでみよう」

ヤムチャたちがおそるおそる進んでいくと,さぁーーっと霧が晴れ始める。

ヤムチャ「ど……どこだ……?」

霧のむこうに,薄暗い森が見えてきたとき,ヤムチャたちの意識は急に薄れていった。

 

 

ヤムチャが目を覚ますと,そこは山小屋だった。傍らにプーアルが寝かされている。

じいさん「おぉ。気がついたか」

ヤムチャ「…ここは…?」

じいさん「お前さん,森で気を失っててな。俺の家に連れてきたんだよ」

ヤムチャ「……」

じいさん「いや,しかしお前さんの連れ,珍しい動物だなぁ。長年この山でマタギをやってたがそんなの見たことねぇぞ」

じいさんは自分がマタギで,この山奥で暮らしているということをヤムチャに語った。

じいさん「で,お前さんの名は?何であんなところで倒れていたんだ?」

ヤムチャ「あ,ああ…オレの名は……オレの名…」

ヤムチャは異界の扉をくぐったショックからか自分の名を忘れていた。今までの生活もうすぼんやりの記憶しかない。

ちょうど目が覚めたプーアルも人語をはなせなくなっていた。

じいさん「忘れちまったのか…?」

ヤムチャ「……どうやらそうらしい。どこか遠くで暮らしてきた記憶はあるんだが…」

 

人のいいじいさんは,ヤムチャいや,名も忘れてしまった少年とその連れの不思議な動物をここに住まわせることにした。

(年端もいかぬ少年がこんな山奥にくるなんてよっぽどの理由があったのだろう…もしかしたら自殺するつもりだったのかもしれない)

…と思ってのことだった。

 

しばらくは少年はじいさんと一緒に狩りをして暮らしていた。

たまに,じいさんの友人のマタギたちと交流することもあったが,少年の接した人間はごくわずかだった。

少年の運動能力は目を見張るものだった。人間のそれを遙かに凌駕していることはじいさんにもよくわかった。

しかし,じいさんは少年の化け物じみた怪力や運動能力のことをいぶかしがることなく本当の孫のように可愛がった。

少年がここへ来て数ヶ月がたったある日。少年はいつものように山に狩りにでかけていた。じいさんは腰痛のため,家で安静していた。

エモノを探す少年。しかし急に不安に襲われ,すぐに家に戻ることにした。

少年の勘は当たった。

家に熊が入り込んでいたのだ。少年が着いたとき,じいさんは既に重傷を負っていた。留守番をさせていたペットの猫は気絶しているだけのようだ。
怒り狂う少年。

またたく間に素手で熊をなぶり殺しにする。

すぐにじいさんにかけよる少年。しかしじいさんの腹は深く傷つき,内臓がとびでていた。もう…助からない…じいさんも少年も悟っていた。

じいさんは震える声で少年に語る。

じいさん「泣くなボーズ…。お前さんに会えてよかったよ…。

ワシにはな,戦争でなくしたせがれがいてな…。勇一郎と言ってな。

ケンカして家を飛び出して,それっきりだ…。

ワシはお前さんをせがれとダブらせていたんだな。

ボーズ…。本当の名を思い出せぬのなら,ワシが親の代わりに名をつけさせてもらえんだろうか…」

少年「ああ。いいともさ…」

じいさん「は…範馬勇次郎…………」

そういってじいさんはこときれる。

少年「いい名だ。今日からオレの名は勇次郎だ…」

 

 

少年,いや勇次郎に残された家族は再びペットである猫だけとなった。

勇次郎「さて…これからどうするかな」

少しの間はここで暮らすが,いつか里におりて新しい生活を始めようと決めた。

じいさんと一緒に何度か里におりたことはあったのだが,ここへ来る以前も隠遁めいた生活をしていたようなので,下界での生活は想像ができなかった。

そんな彼のもとに下界へ降りるきっかけがやってきた。

奇妙な生物をみた…ふもとの村人からテレビ局へ流れた情報が都会の人間をおびきよせたのである。

猟師数名をやとってテレビ局の人間達が森へと足へ踏み入れた。

そのころ,勇次郎はペットともに狩りのため森をとびまわっていた。

じいさんの時のように目を離すことのないように,とペットを連れてきたのである。

しかしそれが災いした。

勇次郎とテレビ局の人間たちの遭遇。

彼らの目に映ったのは,野人のようなナリの勇次郎とその脇にいる奇妙な生物だ。

いっせいに身構える猟師たち。その殺気に勇次郎の野性が反応する。

 

(こいつらは俺に危害を加える者だッッッッ!!!!)

 

本能がそう呼びかける。勇次郎は銃口を向ける猟師たちに飛びかかる。
鋭い手刀が銃ごと猟師の身体を一瞬にして裂いた。


ドンッッ!!

別の猟師から銃が放たれる。

ビシッ

勇次郎の頬をかすって鮮血が飛び散る。

と,ほぼ同時に勇次郎はその猟師の前まで恐るべき脚力で近づいていた。

ブシュッ……

草木が真っ赤に染まる。

勇次郎(銃を持つものはあと1人ッッッッ)

勇次郎の突撃。

…がっ

勇次郎(間に会わんッッッ)

ドォォンッッッ

猟師の一発。

バッ……

血がはじける。

時が凍り付く。

目を見開いたままの勇次郎。

勇次郎と猟師の間にはペットの姿が。

勇次郎の頭には何も浮かばない。

…が,闘争本能だけが目の前の敵をほふろうと勇次郎の肉体を突き動かす。

 

 

勇次郎「プーアル!!プーアル!!!!」

識がはっきりしてきた頃,自分がペットの名を必死で呼んでいることに気づく。

あたりには6,7人の死体が転がっている。

はっと気がつく勇次郎。

このペットの名前はプーアルだったと。

ペットではなく,相棒だったと。

血塗れのプーアルを抱きかかえる勇次郎。

プーアルの口が微かに動く。

(泣かないでください……あなたはこの世界に最強を求めてやってきたのではないですか…)

勇次郎にはそう聞こえた。

しかし勇次郎にはプーアルがしゃべっているのを至極当然のことにのように感じていた。

 

「……ヤ……ムチャ……さま…死な…ないで」

 

記憶と言葉を取り戻したプーアルの最後の言葉。

しかし勇次郎は「ムチャしないで」と聞こえたので,本来の名を取り戻すに至らなかった。

 

 

その後,すぐに勇次郎は山を降りることになる。

人間社会は森とはまったく違うことに気づく勇次郎。

蔑み・嘲り・妬み・嫉み・恨み・裏切り・脅し・騙し・偏見・暴力………

……人間の欲望と負の感情がうずまく汚れた世界。

どいつもこいつもプーアルを殺したような人間に見えた。

下界でも人間のどす黒い部分に触れながら,勇次郎は成長していった。

いや,人間の黒い部分しか見なかったのかもしれない。

いつしか勇次郎は自分以外の誰も信じることができなくなっていた。

勇次郎「この世で信じられるのは己の力のみ!

そして…俺の力が産むのは暴力だ!!

暴力こそがこの俺を地上最強までにひっぱりあげる!

やってやるぜ!プーアル!はっはっはっはァァ!!」

やがてこの地上で範馬勇次郎が名をあげる。

 

 


さて……彼がもしあのとき,鈴をたたき壊していたらどうなっていたのだろう。

 

ヤムチャ「ひぃぃ〜〜!!」

天津飯「おい!ヤムチャおいて行くぞ!」

ピッコロ「ほっておけ!」

ヤムチャ「待ってくれぇ」

天津飯(ったく,ザコにいち早く殺されて役に立たないわ,おまけに足をひっぱるわ…で)

 

 

彼がどんな人生を歩んでいたかは知るすべはない……。

 

 

 

終わり

 



戻る