きっかけ
3年後に現れるという人造人間との戦いに備えて,必死に修行にはげむ地球の戦士たち…。だが,1人のほほ〜んと暮らすヘタレがいた。
まぁ言うまでもなく我らがヤムチャであるが…。
彼はブルマと料理の味付けのことでちょっとケンカして,気晴らしにプーアルとドライブにでかけていた。
ヤムチャ「フンッ!ブルマのヤツ,何が味噌汁は白味噌に限るわね〜だ!!今日はマジで頭に来たっ!もう帰ってやるもんか!向こうから頭を下げるまではな!」
プーアル「ヤムチャさま〜!いつものことですけど,そうカッカなさらずに」
ヤムチャ「やっぱりオレはクールなロンリーウルフが似合っているぜ!うん!やっぱオレには女などいらん!」
プーアル「でもこのエアカー…ブルマさんの…」
ヤムチャ「ィヤッホー!!今日は飛ばすぜ!」
そう言ってヤムチャはブルマから誕生日に買ってもらったエアカーをぶっ飛ばした。
制限速度を遙かにオーバーしたスピードで憂さを晴らすヤムチャ。
まるで母のように,恋人のように,なだめつづけるプーアル。
気がつけば夜もとっぷりと更け,あたりは見知らぬ山奥であった。
エアカーといえども,空を飛べるわけでもなく,山道に沿って進むしかない。しかし行けども行けどもライトに照らされるのは薄暗い森のみ。
プーアル「へんなところへ迷いこんじゃいましたね」
ヤムチャ「バ…バカを言うなよ。オレが迷子になんかなるわけないだろ…
ぅワッ!!!」
何かが茂みから飛び出してきた。
プーアル「……鳥みたいですね。」
ヤムチャ「ほっ…」
しばしの沈黙。
ヤムチャ「……ヘタレだと思っているんだろ?…オレのこと…。そうなんだろ!!愛想がつきたんだろ!」
何か自分が情けなくなってプーアルに当たってしまうヤムチャ。
プーアル「いえいえ。長いつきあいですから。」
ヤムチャ「……」
暗闇と沈黙の中,エアカーはただただ進み続ける。
急に,霧が出てきた。視界が狭まる。
ヤムチャ「ひぇ〜……」
ヤムチャのハンドルを握る手が震えている。
プーアル「大丈夫ですよ」
ヤムチャ「ぅぅぅ…鈴の音が聞こえるよぉ」
プーアル「聞こえませんよ!」
ヤムチャ「後ろから白い服を着た人が追いかけてくるよぉお」
プーアル「誰もいませんよ!」
ヤムチャ「だ…ダメだ…プーアルぅ…ブルマに化けてくれぇ…」
今にも発狂しそうなヤムチャはプーアルに頼み込む。プーアルはにっこりほほえんで
プーアル「……やっぱりブルマさんがスキなんですね」
ヤムチャはブルマに変身したプーアルの手を片手でぎゅっと握りしめながら,霧の中を進みつづけた。
ヤムチャ(ああ……!やっぱりブルマのことを思うと勇気が出る!安らげる!やっぱりオレにはブルマしかいないのかも……)
気がつくと,夜があけていた。森も抜けていたようで,視界が開けていた。遠くに民家も見える。
ヤムチャ「無意識に運転していたのだろうか…」
振り返ると,不気味な巨大な山が聳えていた。急に不気味になったヤムチャ。
…とすぐそばを麓の村の人と思われるおじさんが歩いていた。
エアカーを止め,村人を呼び止める。
ヤムチャ「おたずねしますが,あの山は…」
おじさん「…ん?…お,おたくら…あの山に入ったんか!」
ヤムチャ「え!?……まずいんですか?確かに霧は濃くて大変でしたが……」
おじさん「うーむあの山はな…よそものが入ると深い霧に覆われ二度と出てはこれんと言われておる。」
プーアル「え?でもこうして…」
おじさん「うむ。ただし,真に愛し合う二人だけで入ったならば,たとえよそ者でも出て来れるというんだ」
ヤムチャ「真に愛し合う二人……」
おじさん「うむ。…会うべくして会った運命的な二人だ…。」
ヤムチャはおじさんに挨拶をするとエアカーを発進させた。
ヤムチャは何か思いにふけっているようだった。バックミラーに映る山が次第に小さくなっていくのを眺めながら。
その後のエピソード
――都。
ブルマ「ちょっ…!本気なの!」
ヤムチャ「ああ…。オレにはお前を幸せにはできない…すまない!」
ブルマ「ヤムチャ!待って! …あなたがいなくなったら…あたし…」
ブルマがベジータと肉体的に結ばれたのはこの1週間後だったという。
――ある村。
「あんた,またそうやってからかうんだから!やめなさいよ!」
「バァロォ。若いカップルの前途を祝してやったんだよ!ああ言えばその気になってもっと愛し合うだろぉよ!お山様も喜んでおるよ!
それにしてもべっぴんさんだったなぁ〜…」
――数年後の二人
ヤムチャ「プーアル!今日はこれ!右下の写真の娘でたのむ!」
プーアル「マニアックですね…(運命の人だからしょうがないっか…)」
〜〜完〜〜